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Yamaguchi-yoshiyuki.net

番組出演「2011」

7月 10th, 2017

  • 2011年12月29日
  • フジテレビ
  • 毎週月曜~金曜8:00~9:55
  • 番組名:とくダネ!
  • テーマ:

  • 2011年12月24日
  • 朝日ニュースター
  • 毎月第4土曜日22:00~23:00
  • 番組名:山口教授の“ホントの経済”
  • テーマ:

  • 2011年11月27日
  • NHK総合テレビ
  • 毎週日曜08:25~08:57
  • 番組名:サキどり↑
  • テーマ:世界にGO!極細繊維で元気な中小企業

  • 2011年11月26日
  • 朝日ニュースター
  • 毎月第4土曜日22:00~23:00
  • 番組名:山口教授の“ホントの経済”
  • テーマ:

  • 2011年11月24日
  • フジテレビ
  • 毎週月曜~金曜8:00~9:55
  • 番組名:とくダネ!
  • テーマ:

  • 2011年10月27日
  • フジテレビ
  • 毎週月曜~金曜8:00~9:55
  • 番組名:とくダネ!
  • テーマ:

  • 2011年10月22日
  • 朝日ニュースター
  • 毎月第4土曜日22:00~23:00
  • 番組名:山口教授の“ホントの経済”
  • テーマ:

  • 2011年10月21日
  • フジテレビ
  • 毎週月曜~金曜8:00~9:55
  • 番組名:とくダネ!
  • テーマ:

  • 2011年9月24日
  • 朝日ニュースター
  • 毎月第4土曜日22:00~23:00
  • 番組名:山口教授の“ホントの経済”
  • テーマ:

  • 2011年9月23日
  • フジテレビ
  • 毎週月曜~金曜8:00~9:55
  • 番組名:とくダネ!
  • テーマ:

  • 2011年9月19日
  • NHK総合テレビ
  • 毎週月曜~木曜23:25~23:50
  • 番組名:Bizスポ
  • テーマ:円高で加速する企業の海外進出

  • 2011年9月16日
  • フジテレビ
  • 毎週月曜~金曜8:00~9:55
  • 番組名:とくダネ!
  • テーマ:

  • 2011年8月27日
  • 朝日ニュースター
  • 毎月第4土曜日22:00~23:00
  • 番組名:山口教授の“ホントの経済”
  • テーマ:

  • 2011年8月12日
  • フジテレビ
  • 毎週月曜~金曜8:00~9:55
  • 番組名:とくダネ!
  • テーマ:

  • 2011年8月5日
  • フジテレビ
  • 毎週月曜~金曜8:00~9:55
  • 番組名:とくダネ!
  • テーマ:

  • 2011年7月23日
  • 朝日ニュースター
  • 毎月第4土曜日22:00~23:00
  • 番組名:山口教授の“ホントの経済”
  • テーマ:

  • 2011年7月15日
  • フジテレビ
  • 毎週月曜~金曜8:00~9:55
  • 番組名:とくダネ!
  • テーマ:

  • 2011年7月1日
  • フジテレビ
  • 毎週月曜~金曜8:00~9:55
  • 番組名:とくダネ!
  • テーマ:

  • 2011年6月25日
  • 朝日ニュースター
  • 毎月第4土曜日22:00~23:00
  • 番組名:山口教授の“ホントの経済”
  • テーマ:

  • 2011年6月3日
  • フジテレビ
  • 毎週月曜~金曜8:00~9:55
  • 番組名:とくダネ!
  • テーマ:

  • 2011年5月28日
  • 朝日ニュースター
  • 毎月第4土曜日22:00~23:00
  • 番組名:山口教授の“ホントの経済”
  • テーマ:

  • 2011年5月15日
  • NHK総合テレビ
  • 毎週日曜08:25~08:57
  • 番組名:サキどり↑
  • テーマ: 日本の“隠れたチャンピオン” たち

  • 2011年5月6日
  • フジテレビ
  • 毎週月曜~金曜8:00~9:55
  • 番組名:とくダネ!
  • テーマ:

  • 2011年5月5日
  • NHK BS1
  • 5月3日~5日三夜連続
  • 番組名:イギリス ブランドパワー~ピンチを乗り切る極意~
  • テーマ:ザ・ピープルズ・スーパーマーケット

  • 2011年5月4日
  • NHK BS1
  • 番組名:イギリス ブランドパワー~ピンチを乗り切る極意~
  • テーマ:ロールス・ロイス

  • 2011年5月3日
  • NHK BS1
  • 5月3日~5日三夜連続
  • 番組名:イギリス ブランドパワー~ピンチを乗り切る極意~
  • テーマ:ギーブス&ホークス

  • 2011年4月23日
  • 朝日ニュースター
  • 毎月第4土曜日22:00~23:00
  • 番組名:山口教授の“ホントの経済”
  • テーマ:

  • 2011年4月8日
  • フジテレビ
  • 毎週月曜~金曜8:00~9:55
  • 番組名:とくダネ!
  • テーマ:

  • 2011年3月4日
  • フジテレビ
  • 毎週月曜~金曜8:00~9:55
  • 番組名:とくダネ!
  • テーマ:

  • 2011年2月4日
  • フジテレビ
  • 毎週月曜~金曜8:00~9:55
  • 番組名:とくダネ!
  • テーマ:

  • 2011年1月15日
  • NHK BS1
  • 1月11日~15日五夜連続
  • 番組名:イタリア ブランドパワー~地方にこだわる世界企業~
  • テーマ:マリネッリ社

  • 2011年1月14日
  • NHK BS1
  • 1月11日~15日五夜連続
  • 番組名:イタリア ブランドパワー~地方にこだわる世界企業~
  • テーマ:イリー・カッフェ社

  • 2011年1月13日
  • NHK BS1
  • 1月11日~15日五夜連続
  • 番組名:イタリア ブランドパワー~地方にこだわる世界企業~
  • テーマ:ベネトン社

  • 2011年1月12日
  • NHK BS1
  • 1月11日~15日五夜連続
  • 番組名:イタリア ブランドパワー~地方にこだわる世界企業~
  • テーマ:ジノリ社

  • 2011年1月11日
  • NHK BS1
  • 1月11日~15日五夜連続
  • 番組名:イタリア ブランドパワー~地方にこだわる世界企業~
  • テーマ:フェラガモ社

  • 2011年1月7日
  • フジテレビ
  • 毎週月曜~金曜8:00~9:55
  • 番組名:とくダネ!
  • テーマ:


第56回山口教授のコレが言いたい!2011年

7月 2nd, 2014

「TPP参加問題」再論
~「知らないまま」「知らされないまま」の「参加」でいいのか~

 TPP参加問題についてはすでに前号のスモールサンニュースの巻頭記事で解説したが、その際にも記したように、TPPに関する最大の問題は、TPP参加に伴って生じると懸念される問題について、国民の多くが「知らないまま」「知らされないまま」事態が進行しつつあることにある。

野田首相の「事実上の参加表明」の1週間後に、すでにTPPの事前協議が始まっていた

 国民が「知らない」、あるいは「知らされていない」事実の1つ――それは、アメリカがTPP参加に関連して日本に最優先で要望しているものは、「農産物市場の開放」ではないということである。

 すでにスモールサン会員の方々には一斉メールでお知らせしたが、野田首相が事実上のTPP参加表明をした1週間後の11月17日と18日の両日、アメリカ通商代表部のマランティス次席代表が日本に来て、外務省や経済産業省の高官に対し、アメリカ側の要望事項を説明した。

 この事実を当初外務省はひた隠しにしていた。民主党の山田正彦氏らは外務省に対し、「TPPの事前協議をしていないか」と何度も尋ねたが、「その事実はない」というのが外務省の答えだったという。ところが、アメリカ側の報道で、マランティス次席代表が、「TPPに関連して日本に対する要望を述べた」ことが明らかになり、それを指摘されて外務省もその事実を認めざるをえなくなった。以下は、私が山田氏から入手したその「報道内容」である。

「USTR(米国通商代表部)次席代表のデメトリウス・マランティスは、日本のTPP参加への関心の表明に関連してUSTRが次にとるステップを説明し、また、日本の3分野に関する米国の優先事項を概説するために、先週東京にて日本の高官に会った。

 11月17-18日に行われたその会合において、マランティスは日本に対し、米国産牛肉の輸入制限緩和、日本の自動車市場の開放、日本郵政の改革についてさらなる改善を特に求めた、とUSTRの報道官は述べた」(米国貿易情報紙INSIDE US TRADEのインターネット配信記事)。

 注目すべきは、アメリカの優先的要望事項の中に「日本の自動車市場の開放」が入っていることである。

 自動車については、日本の方がアメリカよりも競争上優位にあることは周知のところである。それを脅威と感じるアメリカの自動車業界は、日本がTPPに加わることに反対してきた。

 そこで、日本をTPPに参加させたいと考えているアメリカ政府は、自国の自動車業界を説得するためにも、日本に対してアメリカの自動車がもっと売れるようにあれこれ要求することになる。TPPに関連して、アメリカ政府が「自動車市場の開放」を最優先に求めてきたのはこうした事情からである。

アメリカは日本の自動車技術の公開やディーラー制度の改変を要望
~「日本はTPP参加の前にこの要望に応えるべきだ」というのがアメリカの主張~

 では、それは具体的にどんな要求なのか。外務省北米第二課による「米国の関心事項(牛肉、保険、自動車)」(2011年11月付)という文書には、次のような記述がある。

3.自動車
・自動車の技術基準ガイドライン
 革新的かつ先進的な安全基準を搭載した自動車に関する自主的ガイドラインを定める際の透明性を高め、また自主的ガイドラインが輸入を不当に阻害しないよう確保することで、米国の自動車メーカーがこうした自動車を日本の消費者により迅速かつ負担のない形で提供できるようにする

 すなわち、日本が自動車の安全性や燃費などに関するガイドラインを定める場合には、その技術をオープンにして、アメリカの会社もそういう技術をもった自動車を日本の消費者に迅速に供給できるようにすべきだというのである。これは日本の自動車の最先端技術を「教えろ」と言っているようなもので、大きな問題をはらむ要求だといってよい。

 これ以外にも、アメリカは日本のディーラー制度などを「非関税障壁」と見ているようで、この点についてもTPPに関連して問題にしてくる可能性がある。「トヨタのディーラーはトヨタ車だけでなく、アメリカ車も売るべきだ」というようなもので、これも簡単に受け入れられる要求ではない。

 これらはあまりにもとっぴで、日本国民の感覚からすれば一見信じられないようにさえ思えるが、経済産業省は「日本の自動車市場の非関税障壁に関する米国の主張について」(2011年11月24日付)という文書の中で、こう記している。

 アメリカ自動車業界は、日本が、「ユニークな技術要求や流通及びサービスセンターなどの制限、通貨介入などの非関税障壁で自動車の輸入をブロック」していると認識しており、「日本は、米国が貿易上の利益(TPP交渉への参加)を与える前に、市場開放に向けた具体的な対応をすべき」だと主張している、と。

 分かりやすく言えば、上に述べたような米国の要求を受けて入れて、「日本の自動車市場を開放」しない限りは、日本をTPPに入れてやるべきではないというのが自動車業界の主張なのである。マランティス通商代表部次席代表はその自動車業界の「声」を日本に伝えるべく、野田首相のTPP参加表明を受けてすぐに日本にやってきたのである。

 この事実を知っている国民は何人いるのだろうか。マスコミから流されてくる情報は、「農業関係者が反対している」というものばかり。TPP問題はマスコミによってすっかり農業問題に矮小(わいしょう)化され、その限られた情報で日本国民は参加への賛否を判断させられてきた。日本経済新聞が誇らしげに強調する「4割賛成」という世論調査の結果についても、私たちはそういうものとして受け止めなければならない。

NAFTAでのISD条項による敗訴件数
――カナダは30件中3件、メキシコは19件中5件、アメリカは19件中ゼロ

 もう1つ、TPPに関して国民が知っておくべきものが「ISD条項」である。これについても日本国民は十分に「知らされていない」。

  ISD条項というのは、Investor State Dispute Settlement 条項、直訳すれば「投資家対国家の紛争解決」条項という意味になる。

 この条項は、例えば日本に進出したアメリカの企業が日本の制度や政策によって不利益を被ったと判断した場合、国際復興開発銀行(世界銀行)傘下の「投資紛争解決センター」(ICSID)へ訴えることができるというものである。

 例えば、TPPの協定の中には「政府調達」という項目があって、公共事業などの入札でTPP参加国の企業を国内企業より不利に扱ってはいけないということになっている。これが適応されると、例えば国がかかわる公共事業で、地方自治体が地域活性化のために地元の中小建設業を優遇して仕事を与えようとしたら、「これは外国企業を差別するものだ」と国が訴えられる可能性がある。

 ISD条項はTPPによってあらためて登場した条項ではなく、すでに日本がシンガポールやマレーシア等と結んだEPA(経済連携協定)にも盛り込まれている。しかし、これまで日本政府がシンガポールやマレーシアの投資家に訴えられたことはない。この事実をもって、「ISD条項を恐れるのはおかしい」とする論者もいるが、米国企業は尋常ではないということを頭に入れておく必要がある。

 2011年8月現在、それまでのNAFTAでのISD条項での訴訟件数は72件にのぼっている。そのうち30件はカナダ政府が訴えられたもので、そのうちの3件でカナダ政府の敗訴が決定している。これらはすべてアメリカ系企業から訴えられたもの。賠償金は総額にしておよそ100億円にのぼる。また19件はメキシコ政府が訴えられたもので、うち5件でメキシコ政府の敗訴が決定している。これもすべてアメリカ系企業から訴えられたものである。賠償金総額はおよそ140億円にのぼる。

 もちろん、アメリカ政府がカナダやメキシコの企業・投資家に訴えられたケースも19件ある。しかし、アメリカ政府が賠償金を支払わされたケースは“ゼロ”である。つまり、アメリカがもっとも強い影響力を持っている世界銀行傘下の組織で裁定を下し、非公開かつ上訴の仕組みもないISD条項の運用下では、アメリカが圧倒的に有利なのである。

 震災復興や津波対策・地震対策に関連して、今後日本での公共事業は拡大する傾向にある。アメリカ企業がそれをチャンスと見て、日本への参入に力を入れる可能性は低くない。TPP参加は日本の中小建設業にも影響をあたえる可能性がある。

 そんな時、公共事業で、地元中小企業を優先して仕事を与えるようなことをしていたら、アメリカの企業はISD条項によって日本政府を訴え、日本は多額の損害賠償を支払わされた上、地元中小企業優先を断念せざるをえなくなる。

 もちろん、問題は建設業にかかわるだけではない。現在日本では、遺伝子組み換えによる食材を使用している場合には、それを消費者に伝えることが義務付けられているが、遺伝子組み換え食材を多く使っているアメリカ企業が、これを「不利益を与えるもの」として訴える可能性もある。

 TPPに参加して安易に日本がISD条項を受け入れてしまうと、日本は自主性をもって制度を構築したり、政策を遂行していくことが著しく制約される。安全基準についても同様である。この事実も日本国民はほとんど知らない。

 TPP参加を急ぐ必要はない。じっくりと国民的な議論を積み重ね、問題点を洗いざらい明らかにしながら、TPPに挑む政府の姿勢を国民の目線で常に正していくことが肝要なのである。そのためにも、今こそマスコミの姿勢が問われている。

※TPP問題を取り扱った私の番組「山口教授のホントの経済」をご覧になりたい方はYoutubeで。
⇒http://www.youtube.com/watch?v=EkBu_E_wTjY

(2011年12月10日執筆)

(2011年/スモールサンニュース12月号より)

第55回山口教授のコレが言いたい!2011年

7月 2nd, 2014

「日本化」と「アメリカ病」
~「失われた10年」に悩まされるアメリカ~

 今アメリカで「日本化」が話題になっている。といっても、「日本文化を取り入れよう」とか、「日本人のやり方を学ぼう」といった話ではない。「アメリカも日本のようになってしまうのではないか」という懸念から、「日本化」が話題になっているのである。

失われた10年

 1980年代後半、日本は不動産バブルを体験し、その不動産バブルがもたらすさまざまな景気浮揚効果に日本中が酔いしれていた。しかし、「宴」は長く続かない。バブル経済は実質3~4年で終わり、90年代に入ると、不動産価格は急落をはじめた。

 それと同時に日本経済は深刻な不況に突入し、以後2003年ごろまで長期の低迷にあえぐこととなった。この長期低迷期を指して、多くの人たちが日本経済の「失われた10年」と呼んだことは周知のところである。

 住宅バブルに酔いしれ、その後リーマンショックとともに深刻な不況に見舞われたアメリカ経済。リーマンショックからすでに3年も経過したにもかかわらず、景気浮揚どころか「二番底」懸念がいまだに叫ばれている。

 そんな中にあって、「アメリカもバブル崩壊後の日本のように、『失われた10年』を体験することになるかもしれない」という懸念が、いよいよリアリティーをもって語られ始めている。奇妙なのは、アメリカ人たちがこうした懸念を、「アメリカ経済も“日本化”してしまうのではないか」といった具合に表現することである。

なぜ「日本化」と呼ぶのか

 もともと「失われた10年」という言葉は日本に向けて言われたものではない。それは70年代後半に発生したバブルが崩壊し、その後長期の経済低迷にあえいでいた中南米諸国に向けて言われた言葉である。「80年代は中南米の失われた10年である」といった具合である。

 その言葉をそのまま不動産バブル崩壊後の日本に当てはめて、当時の日本経済の低迷ぶりを「失われた10年」と称したのである。実際には日本経済の低迷はおよそ14年に及んだのだが。

 大きなバブルが崩壊すると、10年ほど経済が停滞する。これは、「歴史が示す法則」なのである。それは決して日本に特殊な現象ではない。それにもかかわらず、それを「日本化」と呼ぶアメリカ人たち。その背後には、2つの心理が働いているように思われる。

 その1つは、「失われた10年」をバブル崩壊に伴う不可避的な現象だと見做(みな)したくないという心理である。彼らは、それをあくまでも政策上の失敗によるものだと考えたいのである。実際、オバマ大統領は就任後初の会見で、こう語った。

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 90年代、日本は大胆かつ迅速な対応をとらなかったので、いわゆる「失われた10年」に苦しみ、ほとんど成長できなかった。(2009年2月9日の会見、於ホワイトハウス)

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 バブル崩壊後、日本は政策的に失敗したが、アメリカはそんな失敗はしない。だから、アメリカは日本のように「失われた10年」には陥らないのだというわけである。

 そしてもう1つは、アメリカという国の「底力」を信じたいという心理である。「バブル崩壊後10年も停滞したのは日本が弱々しい国だからだ。その点アメリカは違う。だから、アメリカは『失われた10年』とは無縁だ」――そう信じたいのである。

 こうした状況を見ていると、自分のことや自分をとり巻く環境を客観的に認識することがいかに難しいかをあらためて感じさせられる。たしかに、「自分だけは特別だ」と思いたい心理は誰にでもある。しかし、そのことが事態を客観的に分析する能力を低下させ、結果として対応を誤らせることになる。私はこれを「アメリカ病」と呼んでいるのだが、現在のアメリカにとって、この病はかなり深刻な状況だといわざるをえない。

「アメリカ病」を抜け出せないアメリカ

 客観的にみれば、アメリカの状況が当時の日本よりはるかに厳しいことは明らかである。

 例えば、消費。アメリカの場合は「貯蓄率がマスナス」の状況――すなわち消費者たちが貯蓄以上に借金をして、それで消費を続けている事態――が長く続いていた。それが可能だったのは、消費者たちが住宅を担保にして銀行から借金をし続けられるほどに住宅価格の上昇が続いていたからである。あるいは、手持ちの株を売ればいつでも借金が返せるほどに、株価の上昇が続いていたからである。

 したがって、住宅価格の下落や株価の下落が引き起こす消費抑制効果は、不動産バブル崩壊時の日本とは比べ物にならないほどに大きい。日本はいっときバブルに酔いしれたとはいえ、その時期も含めて貯蓄率は「プラス」であった。

 それだけではない。日本とアメリカとでは輸出競争力が違う。バブル崩壊後の低迷から日本経済を引っぱり上げたのはやはり「輸出」だった。中国経済の躍進が日本の輸出主導型回復を後押ししたという「追い風」も作用した。

 たしかに、オバマ政権も輸出倍増を掲げてはいる。しかし、いまだその成果はみられない。日本とは輸出競争力が違うからである。しかも、世界経済の成長は新興国も含めて今後スローダウンすることが予測されている。アメリカの輸出をめぐる環境が当時の日本よりはるかに厳しいことは明らかである。

 そして、今1つは財政問題。現在アメリカの財政赤字はGDP比で戦後最大の水準に達しており、国債の格下げまで起きている。そんな中では財政出動も大きく制約される。この点でも、不動産バブル崩壊時の日本より厳しい状況にある。

 このように客観的には日本のバブル崩壊後よりはるかに厳しい状況にありながら、アメリカ人はいまだに「日本化するかどうか」といった観点でしか問題把握ができないでいる。だからこそ、QE2と呼ばれるむちゃくちゃな量的緩和政策を実施して、ドル価値の低下やインフレをまき散らし、世界中に迷惑をかけてきたのである。

 アメリカにはもっと謙虚に現実を認識し、それをふまえた経済施策を地道に実施することが求められる。それができない以上、アメリカ帝国の凋落は続くことになる。

 さて、そうだとすると、今後日本はその国際的立ち位置、アメリカとの距離関係をどう定めるべきか。将来世代のために、これをしっかり考えて行動するのが、今を生きる日本人の責務である。

(2011年10月9日執筆)

(2011年/スモールサンニュース10月号より)

第54回山口教授のコレが言いたい!2011年

7月 2nd, 2014

中小企業経営者は菅政権の「失敗」から何を学ぶべきか
~「理念」と「対話」と「信頼」を欠いた経営の危うさ~

 野田新政権が誕生した。新政権の誕生で私たちの暮らしはどう変わるのか、増税はいつごろ実施されるのか、新政権下で果たして民主党は挙党体制を組めるのかなど。新政権への期待と不安がマスコミの話題をさらっている。

 野田政権の政策運営については今後たびたび論評することになるだろうから、ここで通り一遍の推測を述べることは避けたい。ここではむしろ支持率の低迷に悩まされ、とうとう辞任にまで追い込まれた菅前首相の政権運営を振り返って、そのどこに問題があったのか、中小企業経営者がその失敗から学ぶとすれば、それは何なのかについて考えてみたい。

「理念」と「対話」――その欠如が菅政権の凋落を招いた

 民主党は自民党から権力を引き継ぎ、菅首相は鳩山前首相から政権を引き継いだ。これは、会社でいえば、社長の世代交代、新経営陣への事業承継にあたるが、一般的に言って、事業承継時の新社長・新経営陣には、少なくとも次の2つのことが課題として課せられる。

 その1つは、明確な「理念」を呈示することである。「自社の存在意義はどこにあるのか」「自社の強みは何なのか」「その強みをどう生かしていくのか」。新社長はその経営の「理念」をまずもって自分の言葉で示し、それを株主、従業員、顧客、取引金融機関など、各種のステークホルダー(利害関係者)たちと共有する。この過程を経て初めて、新社長は「社長」として認知されることになる。

 いま1つは、現場との「対話」を怠らないことである。現場は常に具体的な問題を抱え、その現実的な解決策を求めている。高邁な理念を振りかざすだけでは会社は経営できない。新社長は自ら現場に赴き、そこで問題を発見し、解決の糸口を見いだしていく。そうした現場重視の姿勢とコミュニケーション能力が新経営陣に対する現場の信頼を醸成し、スムーズな事業承継を可能にする。

 かつてカルロス・ゴーン氏が会社再建のために社長として日産自動車に乗り込んできた時、赴任後真っ先に現場を徹底的に回ったことは周知の事実である。「日本人社長の誰もこんな現場まで来てくれなかった」と従業員たちは驚き、そんなゴーン氏に信頼を寄せた。それがその後の会社再建の原動力となっていった。

 明確な「理念の呈示」と綿密な「現場とのコミュニケーション」――会社の事業承継時に必要とされるこれら2つのことを、菅前首相は政権スタート時から全くと言っていいほど怠ってきた。菅政権を特徴づける政策提示の「唐突さ」とそれへの国民の拒否反応がそのことを端的に物語っている。

菅政権に付きまとってきた「唐突さ」

 例えば、菅首相が参議院選挙前に「唐突」に打ち出した消費税増税はその典型である。消費税を引き上げてどういう国づくりを進めようとしているのか。肝心な国家理念が全く示されないまま、「10%」という数字だけが提起された。消費税増税の影響などについて、国会議員や経済の現場を担う経営者たちと「対話」しようという姿勢も全くなかった。

 それゆえに、税率や逆進性対策を巡って、首相の発言が選挙中に二転三転するという醜態をさらけだすことになり、このことがまた有権者の怒りを買って、与党民主党は参議院選挙で大敗を喫した。その結果は「ねじれ国会」。この「ねじれ」に悩まされながら、菅前首相は辞任への道を歩み続けることとなったのである。

 この唐突な増税提案の背後には、「ギリシャ危機」があった。ギリシャ危機を目の当たりにした当時の菅財務大臣は、「財政再建に取り組まなければ、国際通貨基金(IMF)が箸(はし)の上げ下ろしまでコントロールすることになりかねない」と懸念を示したという。

 しかし、このコーナーでもすでに述べたように、少々冷静に考えてみれば、右の懸念が一種の「早とちり」であることは誰でも気づくことである。なぜなら、日本国債はすべて円建てであり、国債償還に必要なのは「円資金」であって、「外貨」ではないからである。したがって、日本政府がIMFに融資を請う理由はなく、そうである以上、当然のことながら「IMFの監視下」に置かれることもない。

 本気で「IMFの監視下」に置かれることを心配するのであれば、警戒しなければならないのは、「財政赤字」ではなく、むしろ対外的な「経常収支赤字」である。経常収支が赤字化すれば、いずれ外貨不足が起き、IMFからの融資を仰ぐ必要も生じる。そうなれば、結果として日本が「IMFの監視下」に置かれるという事態も起きかねない。

 ちなみに、最近の新聞論調は、この2つの「赤字」を意図的に同一視して、財政危機を煽(あお)っている。例えば、日本経済新聞の次の記述はその典型である。

「日本の債務が直近5年間と同じペースで増え続けると仮定すると、2015年に277%となり、終戦直後の英国の記録を抜く計算となる。英国はその後、インフレや通貨安に見舞われ、外貨準備が枯渇した英政府は、70年代にIMFの緊急融資を受けた」(2011年2月12日付)。

 たしかに、英国は戦争直後の1946年に、GDP比269%にまで債務残高が膨れ上がった。しかし、英国がIMFから緊急融資を受けることになったのは1976年である。その間には30年もの開きがある。しかも、その76年当時には、英国の債務残高はすでにGDP比50%程度にまで縮小しており、戦争直後の記録的債務膨張はとっくに解消されていたのである。

 IMFの緊急融資が必要になったのは、60年代に入って以降英国産業の国際競争力が衰え始め、経常収支赤字が拡大してしまったからである。これは、戦費調達に起因する戦争直後の債務膨張とは全く関係ない。ところが、日経新聞の記者は、「その後」という一言で戦後30年の時の経過を中抜きし、平気でGDP比269%の国家債務とIMF緊急融資を直結させてしまうのである。

 これと同じ「論理的飛躍」が、ギリシャ危機を目の当たりにした菅首相の頭の中で起きたにちがいない。あたかも子供が商品売り場でたまたま目に入ったおもちゃに吸い寄せられるように、ギリシャ危機という騒ぎに踊らされて、突然増税策を打ち出してしまったのである。

「理念」も「対話」もなしに唐突に事業方針を打ち出し、強引にそれを実践しようとする。それをリーダーシップと勘違いしている中小企業経営者は少なくない。そういう経営者こそ、菅政権の末路からしっかりと教訓を引き出しておくことをすすめたい。

「唐突」の極み――TPP参加問題

 菅政権に付きまとう「唐突さ」、その極めつけがTPP(環太平洋経済連携協定)への参加問題である。これは、たんなる関税問題ではなく、「日本の文化や伝統までも左右しかねない」(山田正彦民主党衆議院議員)ほどに、多方面への影響が考えられる問題である。これこそ、国家の理念そのものを問うテーマだといえる。

 ところが、それほどの大問題であるにもかかわらず、菅首相は昨年10月、突如として閣議でTPP参加検討の指示を出し、翌11月には、早々とAPECにおいて参加協議への着手を示唆する公式発言を行った。

 関係省庁がどれほどの時間をかけてこの問題について議論を積み上げてきたのか。また、関係各国からの情報収集にどれほどのエネルギーが費やされてきたのか。与党ではどのような「熟議」がなされたのか。これらについて、国民への説明は全くない。APEC議長国として、オバマ米大統領への「お土産」を渡したかっただけではなかったのかと、その唐突ぶりを揶揄する声もあるほどである。

 ギリシャ危機に反応して消費税増税を言い出し、日本でのAPEC開催(米大統領の来日)に合わせて突如TPP参加を提起する。菅政権のこんな場当たり的な政策運営に不安を感じない方がおかしい。となれば、まずはともあれ「反対」の意思表示をしておこうということになる。

 実際、都道府県議会のうち、TPPに関して意見書を議決した40の議会の中で、「反対」が11、「慎重に検討すべき」が23と、8割が慎重対応を求めている。また、941の町村が加入する全国町村会は、昨年10月にTPP参加の撤回を求める緊急決議を行っている。

 これは「理念」と「対話」を欠いた提案が何を引き起こすかの典型的な事例である。菅前首相は消費税増税で大敗した選挙の体験から、ほとんど何も学ばなかったのである。

「人」を育て、「人」にまかせる
  ~「信頼」を欠いた組織運営の末路から学ぶ

「菅さんは自分より能力がありそうな人はすべて排除する。いつもお山の大将でいたがる人だ」――これが国会議員たちから私が耳にした菅前首相への人物評である。

 能力ある人材を見いだし、その能力を育てながら、その人を信頼して仕事を任せていく。任せられた側は、その期待に応えようとがんばる。こうした相互の信頼関係が会社を強くする。リーダーシップとはそういう相互関係をリーダーが意識的に構築していくことにほかならない。

 菅前首相にはこうした会社運営の基本がほとんど理解できていなかったのではないか。唐突な政策提案や方針転換に「現場」は戸惑い、そのたびに閣僚たちも含めて、「自分は信頼して任されていたわけではなかった」のだと自覚させられる。この繰り返しによって組織としてのエネルギーが削(そ)がれ続けてきたのが、まさに菅政権であった。

 そこには、菅前首相の人間観に流れる独特の「人間不信」があったのではなかったか。とすれば、「友愛」を強調した鳩山元首相から一足飛びで、真反対の方向に政権運営の基本がぶれたことになる。

 反面教師として、中小企業経営者が経営者としての自分のありようを振り返るには格好の材料を提供してくれた菅前政権。ならば、野田新首相の政権運営はいかに…。こんな観点から、政治をウォッチングしていくことも悪くない。

(2011年9月4日執筆)

(2011年/スモールサンニュース9月号より)

第53回山口教授のコレが言いたい!2011年

7月 2nd, 2014

被災中小企業への支援を急げ!
~地域金融機関の“魂”が問われる二重債務問題~

 被災中小企業から悲惨な現状を訴えるメールが寄せられている。震災で会社を失い、顧客を失った被災企業が事業継続や会社再建に取り組むもうとしている今、それを阻んでいるものは何なのか。また、その困難を乗り越えるためにはどんな支援が必要なのか。その際、スモールサンはどんな貢献ができるのか――最近の数カ月間、この問題が私の頭を巡り、問題解決のための糸口を求めていろいろな所に出向く日々が続いていた。

放射能避難地域の中小企業を取り巻く現状

「原発から半径10キロメートルもない距離に会社も自宅もあったために、ほとんどすべてを失ってしまったような状態でおります。社員も7つの県に避難中で、業務遂行がほとんどできないような状態です。地元商工会加盟600社中、事業継続の意思を示したのが15社だけで、このままでは原発により全滅させられてしまいます。国も東電も現場の現実をどのくらい理解しているのか甚だ疑問です。

 しかし、私はこんな状況でもとにかくやり続ける意思だけは明確に持っておりますので、どうしたら会社の活動が再開でき、従業員を再び雇用して地域の人たちにサービスを提供できるようになるか、アドバイスをいただければと思っております。つべこべ言わずにとにかく自力で動くしかないと思っております。スモールサンはぜひ入会させていただきます。よろしくお願いいたします」。

 これは本年6月末に、福島県のある中小企業経営者から私の下に寄せられたメールである。この経営者は現在仙台市に在住し、会社の再建をめざして奔走している。

 もともと地域密着型の企業であり、顧客も避難中のため、現在8割の顧客を失った状態にある。しかも、現状ではこの企業への支援はほとんど行われていない。東電から「仮払金」として250万円が振り込まれたが、震災によって不可能になった買掛金の支払いだけでも数千万円を要する状況下では、「焼け石に水」である。

 そんな中にあっても、一部大手メーカーからは容赦ない催促の嵐だという。「すべての業務機能を奪われ、支払い決済ができないので東電の補償がハッキリするまで待ってほしいと何度も依頼しましたが、とにかく払えと。本社から何とか払わせろと指示が来ているんだと。裁判するとまで。仕方ないので、生活資金としていただいた義援金や心あるメーカーさんからいただいたお見舞い金等まで使って支払いをしました」。

 これが被災中小企業を取り巻く厳しい現状である。ちなみに、銀行債務については現在1年間の返済猶予が実施されている。

スモールサンが担う「情報提供」という支援

 私は頂いたメールをもとに早速中小企業庁に連絡を取り、同社が利用可能な公的支援の一覧をつくってもらって、それをこの経営者に転送した。その中にはすでにご存じの情報もあったし、実質的に使えない制度も少なくなかったが、「初めて知った」「早速調べてみます」と言っていただけた情報もあった。

 また、「原子力損害賠償」の見通しなどについて、資源エネルギー庁の担当者からヒアリングをして、その情報をもって仙台に出向いて直接お会いする機会も作った。

「発生した損失のうちどこまで賠償がなされるのか」「いつ賠償金が支払われるのか」といったことは、経営者がもっとも欲しい情報であろう。その見通しが金融機関からの新規融資を左右することにもなるからである。

 もちろん、私がお会いしても何かを確約できるというわけではない。しかし、こうした「情報提供」が経営者の「折れそうになる心」を支え、希望をもって頑張っていただくための一助となるに違いない。これは、そんな思いからの行動である。

 仙台には、中山義活経済産業大臣政務官の秘書さんにも同行していただき、同社の相談に乗ってもらうことにした。「国はがんばる経営者を見捨てない!」――そうあってほしいし、そのことを経営者に実感してもらうことが必要だと考えたからである。

既存債務の重荷を下ろす方法がある」ことを伝える

「情報提供」の重要性は他地域の被災中小企業においても同様である。以下は、水産加工業を営んでいた岩手県のある中小企業から得た報告である。

 同社は津波で会社も自宅も流され、やむなく社員全員(50名)を解雇した。経営者はそれでも会社を再建し、従業員を再雇用することを望んでいる。その希望を阻む最大のネックは、金融機関に残された6億円の債務だという。これがあるために新たな借り入れがまったくできない状況にある。

 同社の経営者によれば、信用保証協会は、「その残債がなければ」8000万円までは信用保証が可能だと言ったという。また、政策金融公庫は同社のメインの借入先である金融機関が1000万円でも融資するなら――つまり、メインの金融機関が同社の再建に本気であることが示されれば――1億5000万円まで無担保無保証で融資することができるという。

 既存債務の重荷を下ろすことができれば新規の借り入れも不可能ではないが、この重荷がある限り被災企業は再生に向けてスタートが切れないことも事実である。こうした厳しい状況下にある被災中小企業に対し、スモールサンは何ができるか。

 私はとりあえず、M&Aやその手法を活用した企業再生に詳しい萩原直哉プロデューサーに現地に行ってもらい、被災企業を対象にした企業相談会を実施することにした。

 岩手県中小企業家同友会の協力も得て、経営者20名の参加を得ることができた。相談会では、被災中小企業が既存債務の重荷をどのようにして減らすかを中心テーマとし、その具体的手法の解説には、サービサーであるミネルヴァ債権回収株式会社の小野間史敏会長にも参加していただいた。

 その「手法」が個々の中小企業にとって早期の問題解決を可能にするかどうかはわからない。しかし、「絶望感で半ばパニック状態にある経営者が、既存債務を減らす手法があることを知っただけでも冷静さを取り戻すきっかけになる」(萩原氏)という。萩原氏は現在もなお相談会に参加してくれた経営者諸氏と連絡を取り続け、情報提供やアドバイスを行っている。

必要なのは「債権買い取り機構」の早期活動開始と地域金融機関の「やる気」

 他方、私は被災中小企業の悲惨な現状を改善する方法について、中山政務官や高原中小企業庁長官をはじめとする行政担当者と繰り返し意見交換を行った。現在、進められている「債権買い取り機構」設立構想の進捗状況などについても、情報を得るべく担当者からのヒアリングに力を注いだ。

 今、政府は被災各県に金融機関から貸出債権を買い取る機構(ファンド)を設立することを考えている。そして、その機構は金融機関から買い取った中小企業向け債権を一定期間棚上げにして、元本の返済や金利の支払いを凍結する。その後に、一部を債権放棄した上で残債を金融機関に買い戻させるといったことを構想している。

 これが仮にうまく機能すれば、中小企業の既存債務は相当程度減少し、新規の借り入れも可能になるかもしれない。問題は、この構想がいつ現実のものとなるか。そして、それが実効あるものになるように、当該地域の金融機関がどれだけ真剣に協力するかである。

 被災地域を主な地盤とする信用金庫や信用組合は別だが、県全域を活動対象としているような地方銀行は、被災企業向け債権についてはすでに貸倒引当金を十分積み終えており、自らすすんで貸出債権を「機構」に売却しようという気持ちはない。むしろ、それらを「塩漬け」にしておいて、借り手企業が多少でも売り上げが立つ状況になったら、少しずつ返済させた方がいいと考えている。――そんな情報も私のもとには入っている。

 仮にそうだとしたら、被災中小企業には既存債務がいつまでも重しとなってのしかかり、新規の融資を受けることもできず、再生のスタートも切れない状態が続くことになる。中小企業はただただ「貸しはがし」の対象となって、じりじりとやせ細っていくことになる。これでは、被災地域の企業再生も雇用の再生も進まず、復興も絵に描いた餅になる。

 今は、地方銀行としての「魂」がそれを許さないことを信じたいと思うが、仮にそれがかなわない時は、あらためてさまざまなルートを通して金融機関への圧力を高める社会的運動が必要になる。もちろん、その時にも、スモールサンは何らかの貢献を果たしたいと考えている。

(2011年8月8日執筆)

(2011年/スモールサンニュース8月号より)

山口義行・公式WEB

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