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第23回 “祭りの効用”をもっと重視しよう!

8月 18th, 2008

元記事

夏の風物詩といえば、花火、かき氷、浴衣、そしてお祭り。

今年も全国各地で多くの夏祭りが行われた。

古き良き伝統を今に受け継ぐ日本の祭り

夏祭りという言葉を耳にするだけで、心がうきうきしてしまう人も多いのではないか。夏祭りは日本人にとって、生活に根付いた欠かせない行事となっている。「コレが言いたい」の第23回は、経済的な側面もさることながら、この夏祭りがどのような効用をもたらしているのか、探っていきたいと思う。

関東一の祇園祭:熊谷うちわ祭り

40度を越す猛暑日で有名な埼玉県熊谷市。ここでは毎年7月20~22日に「うちわ祭り」と呼ばれる祭りが開催される。この祭りでは、およそ800店の露店が立ち並び、集客数は三日間でのべおよそ75万人にも上る。

うちわ祭りは、250年以上もの歴史を持つ、関東一の規模を誇る祇園祭である。江戸時代に、祭りの期間中各商店が買い物客にうちわを配布したことが評判となり、こう呼ばれるようになった。

祭り期間中は国道17号線を歩行者天国として開放し、12の市街地がそれぞれ豪華な山車や屋台を引き回す。市は、お祭りの三日間のために、山車が通りやすいようにと中央分離帯を地中に埋め込むことができるように可動式にした。また、山車の高さを考慮して、信号機も高さ調節のできるものを設置した。まさに、町全体を「お祭り仕様」にするという力の入れようである。

熊谷うちわ祭夜になると、ますます多くの人でにぎわうようになり、さらに盛り上がりを見せる。12の山車や屋台が一堂に集まり、お囃子の「叩き合い」が行われる。それぞれが相手のリズムに乱されないよう競い合ってお囃子を奏でる姿はまさに圧巻である。

子供から大人まで、世代を超えて愛されるうちわ祭り――では、地元の人々にとって、熊谷うちわ祭りとはどのような存在なのであろうか。

今年のうちわ祭りの総責任者を務めた重竹淳一氏は、次のように話す。 「お祭りの中心になる人たちは、街の経済人が多いけれども、それを支えてくれる多くの人たちの存在がある。祭りをやることで、たくさんの人たちがお互いを身近に感じるようになる。見聞きするのはいい情報ばかりではない。街の厳しい現状を見せつけられることにもなる。『あそこの家は商売をやめた』とか『また商店街にシャッターが増えた』とか『あそこ家族は郊外に引っ越していった』とか。でも、うれしいことも、残念なことも、お祭りがないと何も知らずに過ぎてしまう。祭りは、自分たちが住んでいる地域を知る絶好の機会なんです」。

熊谷市市役所商業観光課の長谷川泉課長も、こう言う。

「小さなころからお囃子の音を聞いて育つことが、地域への愛着を生んでいると思います。そういう意味では、熊谷うちわ祭りは人口の流出を食い止める一つの手段にさえなっている」。

このように、うちわ祭りは、自分たちの住んでいる地域を一人ひとりが意識する貴重な機会を提供している。それはまさに、熊谷市民にとって、町と人とを結びつける重要な役割を果たしているのである。

祭りの効果は?

さて、「祭りの効用」を一般的に整理してみると、以下の三つが考えられる。

  1. 観光イベントとしての経済効果祭りは観光イベントとしての側面を持っているため、大きな経済効果が期待できる。表1は東北6大祭りの経済効果を数値化したものである。これを見ても明らかなように、祭りにはかなり大きな経済効果がある。(表1)東北6大祭りの観光消費支出 (2007年)また、ある部門の消費が伸びると、それがどのくらいの効果を発揮して、どれくらいの生産を誘発するかを計算したものを産業連関表というが、これに表1の観光消費支出を当てはめて算出したものが表2である。これを見ると、生産誘発額は1,718億円にもなる。

    (表2)東北6大祭り 経済波及効果

    また、粗付加価値誘発額は1,026億円に上る。たとえば500円の原材料から、1500円の商品を生産すると、原材料費500円を除いた1000円分の価値が新しく作られたことになる。この部分を付加価値と呼ぶ。これを合計したものがGDPである。1,026億円の粗付加価値が誘発されるというのであるから、東北のGDP約33兆円のうち0.3%分は6大祭りの効果によるものであるという計算になる。祭りの経済効果がいかに大きなものであるかが分かる。

  2. 地域の認知度アップ二つ目は地域の認知度が上がるという点である。「青森といえば、ねぶた祭り」。「七夕祭りといえば、仙台」といった具合に、地域を語るばあいには、「祭り」がその代名詞になることが少なくない。その意味で、祭りは、地域ブランド戦略に欠かせない一つのツールとしての意味をもっている。
  3. 地元の結束を強化三つ目は地域の結束力を強化するという点である。祭りがあると、それをきっかけにしてその町の住民が集まる。人が集まるところに地域の情報が集まり、地域が抱える問題を住民が共有する機会にもなる。それが問題解決にもつながっていく。実際に、祭りがきっかけとなって、地域の抱える問題を住民たちで解決した町がある。

    群馬県前橋市日吉町に、祭りを開催する母体として「飛組(ひぐみ)」というNPO法人を設立された。神社があったわけでもないのに、祭り好きが集まり、家が一軒建ってしまうほど高価な山車や御輿などを買いそろえ、りっぱな祭りを実現させた。

    その準備の過程で、「最近、町内で盗難が多い」ということが話題になり、みんなで問題解決に取り組もうと話が盛り上がった。祭りの実行メンバーの中にたまたま電気工事関係者がいたため、防犯用のセンサーライト取り付けが提案された。早速、希望する世帯にセンサーライトを工事費無料で設置するというボランティア活動が始まった。こうした活動がまた住民同士の交流を深めることになる。今まで言葉を交わしたこともなかったような住民たちの間でもふれあいが増え、そこでまた様々なアイデアが提案されるようになる。防犯カメラの設置、防犯パトロールの実施など・・・。こうして、「町の安全を自分たち自身の手で守ろう」という気運が盛り上がっていった。こうした活動が評価されて、この町は「安全安心な街づくり功労賞」という総理大臣表彰まで受けている。

    地域のコミュニティーが本来持っている問題解決能力を、祭りがよみがえらせた事例である。(参考 西原勝洋「祭りの効用―山車・神輿からブルパトが」『月刊地域づくり』08年5月号)

消えていく祭り

他方、地域にある程度の活力がないと、祭りを実施すること自体が難しくなるというのも事実である。実際、各地で「祭りが消えていく」という現象が起きている。表3にも見られるように、ここ数年だけでも、多くの祭りが中止になっている。

(表3)中止になった祭り

一つは経済的な理由。地域経済が落ち込むことで、自治体の税収が減り、援助が難しくなって、結果として祭りを取りやめてしまうということが起きる。大阪の御堂筋パレードでは予算が三分の一にまで削られ、パレードを断念せざるを得なくなった。

このように祭りがなくなっていくのは、町のエネルギー低下を表している。とくに、商店街の衰退は、祭りの担い手の喪失をもたらしている。また、地方から若者が消えていることも祭りの実施を難しくしている。祭りの消滅は、今の日本の経済や社会の構造的問題を映し出している。

「コレが言いたい」〜祭りの効果を見直せ!〜

地方自治体の財政難から、祭りが取止めになるという例が後を絶たない。しかし、以上見てきたように、祭りには経済効果も含め、非常に大きな効用がある。むしろ、祭りを活用して街を元気にしていくという発想が求められる。

たとえば、最近「ふるさと納税」が話題になっているが、「祭りの存続」を訴えることで、全国に納税者を増やすという戦略も考えられる。「自治体の財政難のために、慣れ親しんだ祭りが消えていくのは忍びない」。そう感じたその地域の出身者たちが、全国各地から納税に応じるということは十分にありうることである。また、自分の資金供与で維持された祭りであれば、「祭り期間中ぐらいふるさとに戻ろう」と考える人も増えるかもしれない。さらには、それがきっかけで、「定年退職後は、ふるさとで過ごしたい」と考える人も増えるかもしれない。全国に散らばった人たちが「戻りたい」と感じる街づくりを地域は実践していく必要がある。

祭りの効用――今一度真剣に考えてみるべきテーマである。

(2008/8/18 執筆)

第22回 注目!ゴルフ場の芝からバイオエタノール!?

8月 7th, 2008

元記事

洞爺湖サミット(08年7月7日~7月9日)の主なテーマが地球温暖化問題であることは周知のところである。今やCO2の削減は喫緊の課題。そこで、注目されているのがバイオエネルギーなどの代替エネルギーである。

期待される第2世代バイオエタノール

地球温暖化が叫ばれる中、化石燃料の代替としてバイオエネルギーが注目されている。しかし、バイオエネルギーは食糧価格の高騰を引き起こすなど問題も多い。そこで期待されているのが第2世代バイオエタノール。すなわち、食用作物を用いないバイオエタノールの生産である。しかし、コスト面などを考慮するとその事業化が難しいのも現状。そこで、「コレが言いたい」の第22回は、第2世代バイオエタノールを取り上げることにしたい。

将来はバイオエネルギーが主役になる

IPCC(気候変動に関する政府間パネル)による世界のエネルギー供給予測では、図表1に示されているように、2050年にはバイオエネルギーが石油や天然ガスを上回り、2100年にはバイオエネルギーが圧倒的な主役になると予測している。

(図表1)世界のエネルギー供給予測世界のエネルギー供給予測

(出典:IPPC 2nd Report Figure5を基に作成 )

バイオエネルギーに注目が集まっているのは、それが生物由来の循環型エネルギーであるため、一つには化石燃料のように枯渇しないこと、そしていま一つはいわゆるカーボン・ニュートラル――植物は成長する際に光合成を行い、二酸化炭素を吸収しているので、エネルギーとして利用される際に二酸化炭素を発生させてもプラスマイナスゼロとみなされる――であるとして、地球環境にやさしいとみなされているからである。

アメリカとブラジルで世界の7割を生産

図表2によって、バイオエタノールの生産状況を国別に見てみると、生産量の圧倒的な部分がアメリカとブラジルによるものであることが分かる。実際、アメリカとブラジルで世界の生産量の約7割を占めている。アメリカの場合、世界一の生産量を誇るトウモロコシが主たるエタノール原料であるが、昨年は生産量の4分の1をバイオエタノールに利用している。ブラジルの場合は、やはり世界第一位であるサトウキビ生産の約3割がバイオエタノールに使用されている。中国・EUなどもバイオエタノールの生産に取り組んでいる。

(図表2)世界各国のバイオエタノール生産量世界各国のバイオエタノール生産量

注1 06年まではすべてのエタノール、07年は燃料用エタノール(出典:農業情報研究所HPより)

食用作物を用いないバイオエタノール

さらに、食用作物を用いたバイオエタノール生産が増えたことが今日、食糧価格高騰の一因となっている。日本がバイオエタノール生産を増やすことで、更なる食糧価格の高騰を招いても困る。

そこで、「地産地消型」で、なおかつ食用作物を用いないでバイオエタノールを作ることが必要となる。だが、そんな都合のいい方法があるのだろうか。以下に、注目すべき一つの事例を紹介したい。

岐阜大学の高見澤一裕教授と、環境ベンチャー企業である㈱コンティグアイは、食料と競合しない”あるもの”からバイオエタノールを生産する技術を共同開発した。それは、”芝”である。刈り取ったゴルフ場の芝を乾燥させ、それからバイオエタノールを作り出すというもの。

通常のバイオエタノールはトウモロコシなどのでんぷんを糖化・発酵・蒸留して作る。でんぷんを含まない芝をどのように糖化するかが大きな課題であった。岐阜大学の高見澤教授は刈り芝(のセルロース)を糖化するのに適した酵素を発見し、これを解決した。それによって芝だけではなく、竹や雑草などからもバイオエタノールを生産することができるようになった。乾燥芝1トンから200mlのバイオエタノールを生産できる。さとうきびの場合1トンから300mlの生産であるから、生産効率的にそれほど差はない。とすれば、あえて食物からバイオエタノールを生産する必要はないということになる。

この会社では、三重県亀山市にプラントを建設し、来年にも事業を本格的に開始する予定である。小さなプラント(8000万円程度で建設可)で生産可能なため、鈴木繁三コンティグアイ社長は、この試みを地産地消型の「地ビール」ならぬ「地エタノール」生産と称している。

この事例が注目に値する3つの理由

以下の3つの理由で、この試みは注目に値する。

  1. 一つ目の理由は言うまでもなく「非食料」であるという点。とうもろこしやサトウキビからの生産では食糧価格をより高騰させることになりかねないが、刈り芝ならこのような心配はない。
  2. 二つ目の理由としてはゴルフ場の刈り芝という、「産業廃棄物」を用いる点。ゴルフ場は現在、芝の刈り取りと廃棄のために多額の処理費用を負担している。その資金をバイオエタノールの生産のために用いるなら、バイオエタノールの生産も採算に合うと考えられている。事業化が企図されているのはそのためである。ゴルフ場のみならず、高速道路に敷かれた芝や河川などの雑草の処理費用などをバイオエタノール生産に回すことも考えられ、将来の広がりが期待できる。
  3. 三つ目の理由は地産地消型である点。プラントは何億円もかかるものではなく、地ビール生産のためのものと同程度である。各地に小プラントが多数出来れば、エタノール原料の輸送コストや輸送の際のCO2排出なども削減でき、環境改善に効果的な試みとなる。

「コレが言いたい」~低炭素型社会への明確なプロセスを示せ!~

政府は脱化石燃料化を進め、日本のエネルギー供給に占める再生可能エネルギーの割合を05年の5.9%から20年には8.9%に、30年には11.1%に引き上げたいとしている。EUが20年までに20%、アメリカでも30年までに20%という目標を掲げていることからすれば、日本の目標は極めて控えめなものである。しかし、それでもその目標を達成するためのプロセスがまったく描かれていないというのが現状である。

たとえば、太陽電池の普及を謳ってはいるが、ソーラーパネルを設置する家庭を12年後の20年には、320万戸と、現状の10倍になることを想定している。しかし、そのための促進税制など具体的な施策はまったく見当たらない。

バイオ燃料にいたっては、現在ほとんど生産されていないにもかかわらず、2年後には生産量50万キロリットルにする目標を描いている。これこそ、まさに絵に書いた餅である。高い目標を掲げているが、目標実現のためのプロセスは全くと言っていいほど示されていない。

上に記したように、ゴルフ場の刈り芝を活用したバイオエタノール生産など、民間では既にさまざまな試みが始まっている。こうした事例を踏まえながら、今こそ政府は低炭素社会へ向けた具体的なプロセスと誘導政策を明確に示すことが必要である。政府の明確な政策呈示があってこそ、民間の思い切った投資も可能になる。環境サミットを取り仕切った日本政府の「やる気」に強く期待したい。

(2008/8/7 執筆)

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