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第18回 新銀行東京を徹底検証!

8月 9th, 2007

元記事

東京都が1000億円を出資して設立した新銀行東京の経営状況が芳しくない。累積赤字は膨らみ続け、都の出資した資本金も大幅に毀損している。経営が悪化した原因は何なのか、また、今後再建の見通しは立つのだろうか。

累積する赤字

新銀行東京は貸し渋りに悩む中小企業への資金提供を目的に、東京都が1000億円を出資して2004年に設立した(開業は2005年4月1日)。しかし、07年3月期決算の最終赤字は547億円。設立後3年間で、累積赤字は既に849億円にまで膨らんでしまっている。都の出資分の約8割が失われてしまっている計算になる。このままでは都の出資した1000億円が消滅してしまう可能性は極めて高い。「コレが言いたい」の第18回は、新銀行東京を取り上げ、徹底検証したいと思う。

経営悪化の原因

地方の信用金庫ほどの規模を持つ新銀行東京は、石原慎太郎都知事の2期目の公約の目玉として掲げられ、2005年4月に営業を開始した。設立の理念は中小企業を巡る金融状況の解決であり、民間銀行の貸し渋りや担保主義から中小企業を救済することを目的としている。

当初は来年(08年)3月までに黒字に転換する予定だったが(図表1)、巨額の累積赤字を受けて本年6月に黒字化目標を2年先延ばしした。さらに、無担保・無保証融資の限度額引き下げや人員削減、ATMの全廃など、中期経営計画の見直しが行われている。

(図表1)新銀行東京の経営状況(経常利益)新銀行東京の経営状況(経常利益)

赤字が増えた原因はとして、融資額が伸びていないことと不良債権の増加の2つが考えられる。図表2にあるように、初年度の中小企業向け融資の計画達成率は56%であり、2年度目も前半の3倍増えないと計画達成は不可能である。

(図表2)中小企業向け融資保証残高中小企業向け融資保証残高

また、融資の伸び悩みは預金と比較するとより鮮明である(図表3)。初年度は3割、2年目の前半では集めた預金の2割強しか中小企業向け貸し出しに使われていないのである。

(図表3)預金残高と中小企業向け融資預金残高と中小企業向け融資

もう一つの原因である不良債権の増加については、貸倒引当金の増加が経営を圧迫している。貸倒引当金とは債権が回収できない可能性に備えて予め計上しておくお金のことである。実際に企業の倒産が起こって損失が発生した場合は、利益を削って計上した貸倒引当金から損失を補填する。そして、新銀行は他の銀行で融資を受けられなかった企業を主な融資対象にしているため、初年度1年間で約80億円の引当金を積み、2年目にはわずか半年で100億円の引当金を積んでいる。この貸倒引当金の増加が、経営悪化に大きく響いているのである。

銀行が抱えるジレンマ

そもそも「銀行を新しく作る」という政策そのものが本当に良かったのか、という問題が基本的にある。図表4にもあるように、新銀行東京の設立構想が打ち出された2003年には、中小企業の金融事情が大きく好転しつつあった。そして、銀行が開業した2005年にはすでに貸し渋りは終焉し、民間銀行が中小企業への融資に力を入れていた。さらに、営業開始後に新銀行から融資を受けた企業の多くは、他の銀行で融資を受けられなかった企業である。つまり、借り手不足による融資の伸び悩みと不良債権の増加を原因とする経営悪化は、自明の理だったのである。

(図表4)借入難度 「困難」-「容易」同年同期比借入難度 「困難」-「容易」同年同期比

新銀行は優良企業ばかりに融資して黒字にしても民業圧迫になり、業績の悪い企業に貸し込めば不良債権がたまって赤字になるという、本質的なジレンマを抱えている。苦しい中小企業に融資をしながら、一方で赤字を出さないようにバランス良く経営することが求められているのである。

そのような銀行を作ることに対して、設立前から東京都の職員や銀行関係者からも疑問の声があがっていた。それにも関わらず新銀行は営業を開始し、税金である資本金を減少させ続けている。そのことに関して、2007年3月15日の制作発表会見において石原慎太郎都知事は「これは、残念ながら大きく状況が変わりまして、しかし、私は銀行を作った趣旨は決して間違っているとは思いません。」と発言し、今後は大株主として発言をしていくことと、2年後の再建を明言した。

コレが言いたい!
――明確な再建計画を示せ!

2年後の再建を明言するならば、失敗した場合には撤退することも含めた明確な再建計画があって然るべきである。具体的な再建計画もないままに営業を続ければ、追加の税金の投入など事態の悪化を招くだけである。石原都知事は自己の進退も含めて、自分の発言に責任を持つべきである。

また、政策が提示され、このような結果が出ているにもかかわらず石原都知事に投票した都民は、自分の選挙行動の結果が問われる時でもある。2年後の新銀行東京の動きに注視してみてはいかがだろうか。

(2007/8/9 執筆)

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