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第13回 2006年ニュースに見る 危うい国ニッポン!

12月 31st, 2006

元記事

今、日本はいろんな意味で「危うい国」になりつつある――2006年のニュースの多くが、あたかも私たちに警鐘を鳴らすかのようにそのことを物語っている。そこで、今年最後の「コレが言いたい」では、あらためてこの1年間のニュースを振り返ることにしよう。

危うい国・ニッポン(1)”医食住”が危ない!

かつて日本は、世界でも有数の安全な国と言われてきた。しかし、今、その安全神話が崩壊の危機に瀕している。

★耐震偽装問題 姉歯容疑者ら逮捕。
耐震強度偽装事件で姉歯秀次元一級建築士ら8人逮捕。偽造された構造計算書に基づき強度不足のマンションなどが建設されていたことは、住まいの安全を根底から覆した。
★米国産牛肉輸入再開の拭えない疑念。
米国産牛肉輸入再停止後わずか半年で輸入再開。安全性確保に疑念高まる。
★強行採決で 医療制度改革法成立。
「医療制度改革」という名の医療費窓口負担引き上げ。高齢者に厳しい負担増。

崩壊する「安全神話」

衣食住ならぬ”医食住”が危ない。2006年ニュースは、国民生活の根幹に忍び寄るさまざまな不安を露呈させた。

耐震偽装マンションの発覚は、国民の”住”への不安を衝撃的に拡大させた。「自分の住むマンションは大丈夫なのか?」と、多くの国民が不安に陥った。また、問題マンションの建て替えは、遅々として進まない。建て替えがなされればなされたで、二重ローンが住民たちの生活を圧迫している。なぜ、こうした事態が発生したのか。二度とこんな事件が起きないようにするには、安全確保のためのどのような仕組みづくりが必要なのか。8人の逮捕で事件は終息に向かったものの、原因究明も今後の対策も不十分なままである。

米国産牛肉問題では、”食”への安全が根底から覆されたといってよい。食品安全委員会プリオン専門調査会メンバー12人のうち6人ものメンバーが辞任するといった異常事態を引き起こしながらも、強引に米国産牛肉の輸入が強行された。同調査会のリスク評価は、輸入されるのは完全に20ヶ月齢以下の牛であることを前提としている。しかし、米国はトレーサビリティ(牛の生年月日個体識別)がなされていない。それは「安全」評価の根底が保証されないままの輸入再開である。また、厚生労働省と農林水産省の調査団視察が輸入再開の条件となっていたが、アメリカの牛肉処理施設への視察はマスコミ取材を全面的にシャットアウトしてのものであった。まさに日本国民の目を閉ざしての輸入再開である。ブッシュ政権は食肉生産者協会に弱いといわれている。結局のところ、輸入再開は、議会選挙を控えていたブッシュ政権に、小泉政権から送られた「プレゼント」ではなかったか。とすれば、それは日本国民の食の安全を犠牲にするという、あまりにも「高価なプレゼント」だったといえる。

長寿大国・日本の高齢者たちに降りかかる医療費負担増は、国民の将来への不安を増幅している。医療制度改革法成立後、窓口負担が増え、病院へ行く回数を減らさざるをえなくなったという高齢者は多い。「小さな政府」を標榜する安倍内閣の下にあっては、政府の医療関連支出をいかに小さくするかは今後とも追及される課題である。日本国民が誇りとしてきた医療に関するセーフティーネットがいよいよ縮小され、安全・安心は個々人が「お金で買うもの」ということになりかねない。

コレが言いたい!
――「自助努力」には限界がある―――

2006年は、まさに日本の「安全神話」が崩壊した年となった。農林水産省が行った「食品の安全性に対する意識調査」では、”どちらかといえばより安全ではなくなっている”と答えた人は45%にまで達している(図表1)。

図表1図1 食品の安全性に対する意識調査 農林水産省「安全・安心モニター第一回調査」より作成

その主な理由は、「輸入品や高度に加工された食品など、生産現場の見えない食品が増えたから」というもの。つまり、自分の目で安全を確認できないことへの不安なのである。

小泉総理は、米国産牛肉の輸入再開について「米国産が良いのか、日本産が良いのか、それぞれの好みもある。…個人の選択の問題だ」と語り、政府の責任を完全に棚上げし、個人の「自己責任」の問題に矮小化した。しかし、十分な情報が得られない環境のもとで「自己責任」を問うことはできない。だからこそ、国民は「不安」なのである。実際、混合肉の場合、米国産牛が50%に満たない場合には表示義務がないため、国民は米国産牛肉が混入されていることを認識すること自体できない。

重要なのは、国民の「自助努力」や「自己責任」には限界があるということである。医療や年金・福祉に関しても同じで、それが国民一人一人の「自助努力」では解決できない問題だからこそ、公的なセーフティーネットの充実が求められる。テレビ東京調査でも「年金や福祉に使うために消費税を引き上げることについて」、回答者の59.8%が「上げてもよい」と答えている。そこには、公的保障を求めている国民の声が明確に示されている。政治は何のためにあるのか。いまその根本が問われていることを強く指摘したい。

危うい国ニッポン(2) 企業のモラルが危ない!

うんざりするほど企業不祥事が連続し、国民の目をひいたのも2006年の特徴であった。

★堀江貴文氏らライブドア粉飾決算で逮捕。
★村上世彰氏インサイダー取引で逮捕。
★保険会社の保険金不払いで行政指導。
★消費者金融会社が融資や取立てで違法行為。
★三井住友銀行が融資先企業に金融商品購入を強制。
★パロマ工業製の湯沸かし器による一酸化炭素中毒事故で21人死亡。
★シンドラー社製エレベーターで事故多発。1人死亡。

市場原理主義は企業モラルを低下させた!

図表2は、企業不祥事の急増ぶりを新聞報道件数で見たものである。

図表2 「不祥事の報道の件数」図2 不祥事の報道の件数 東京経済大学・駒橋恵子助教授の調査、日本経団連タイムス掲載

これを見るかぎり、小泉政権誕生以降の急増ぶりが顕著である。もちろん、これは直接には不祥事が発覚する件数が増加しているということであって、たんにこれまで潜在的にあったものが表面化してきたことを示すに過ぎないのかもしれない。しかし、小泉政権が推し進めた市場原理主義的改革が企業モラルの低下を招いている側面も無視できない。

1つには「事前的規制から事後的規制へ」という流れが鮮明化したこと。企業活動をできるかぎり自由にして、問題行為については事後的にチェックするという行政面での制度的変更である。このことが、企業の「やり得」的行動を助長した。いま1つは競争激化の中、あきらかに企業が「ゆとり」を失ったこと。そして3つ目は、「勝ち組・負け組」といった単純な「二分法」的思考が蔓延し、極端な拝金主義が横行したことである。

コレが言いたい!
――企業も「市民」であれ!―――

近年の企業不祥事の増加は、一方で内部告発の推進とそれによる発覚の多発化といった側面もあり、最近ではモラルの向上に積極的に取り組もうという企業も増えてきている。昨今、企業の「社会的責任」が声高に叫ばれるようになってきた。それは、 企業行動が市民社会に及ぼす影響がかつてなく大きくなっているからにほかならない。とすれば、経営者は「企業も市民である」ことを自覚し、利益追求を自己抑制してでも市民的モラルから大きく逸脱しない経営を実践することが、長い目で見て企業の持続的発展を可能にするのだという意識をもつ必要がある。また、行政もそうした企業行動を励まし、推進する仕組みづくりを真剣に考える時がきている。経済活力を失わせることなく、市場競争万能主義からいかに脱却していくかが求められているのである。

危うい国ニッポン(3) 民主主義が危ない!

民主主義の根底が揺らいできている。

★拉致問題でNHKに放送命令
報道の自由を侵害する行為か?報道の自由への介入ともとれる事態が起きた。政府がNHKに対し、北朝鮮による拉致問題をラジオの国際放送で重点的に取り上げるよう命令。世論誘導にもつながりかねない個別で具体的な放送命令は異例のことである。
★タウンミーティングでやらせ質問発覚
小泉内閣の下「国民との対話の場」として始まったタウンミーティング。今年9月に青森県で開かれたタウンミーティングで、参加者に発言の内容を事前に依頼していたことが発覚し、その後「ヤラセ」ぶりが次々に発覚することになった。情報操作によって政府に都合のいい世論を形成しようというものにほかならない。

民主主義が危機に瀕している!

今年は政権交代という大きな節目があったが、安倍内閣になって自由な議論の機会や思想・信条の自由がないがしろにされているのではと疑念を抱かざるをえない出来事が多数起きている。

政府の内閣府タウンミーティング調査委員会の最終報告書では、全174回のうち質問内容を指定した「やらせ」は15回で、そのうちの5回は安倍内閣のもとで今月法案が成立した教育改革に関するタウンミーティングで行われていた。また、政府による質問者の指名は全体の6割にあたる105回、他にも不透明な会計処理や都合の悪い者は排除するなどが明らかになった。

民主主義は国民の政治参加なしにありえない。そのためには国民への正しい情報提供が不可欠な前提である。最近では、「内閣支持率」という「国民による政治参加」が重要になってきているが、それを意識して「やらせ」タウンミーティングを実施して、政府は世論を誘導しようとしてきたのではないか。とすれば、これは小泉政権の「品格」のなさを示すだけでなく、民主主義を根底から崩壊させかねない事態である。

情報といえば、もっとも重要な役割を果たすものはメディアである。安倍政権はそのメディアに「禁じ手」を使った。NHKに対する放送命令である。

NHKに命令して放送させるというのは、戦前の「大本営発表」と同じである。軍隊を統帥する「大本営」の発表をそのまま国営放送が国民に流すという「情報操作」によって、日本国民は戦争の泥沼に突き進み、何百万という人々の命が失われた。その反省から、戦後はNHKを政府から自立させるため、国民の受信料で経営を賄うことにした。政府の「命令」でNHKが放送を流すことになれば、戦前の「大本営発表」への道を再び歩み始めることになりかねない。

安倍政権下で民主主義が危機に陥れられかねない事態は以上のことだけではない。中川昭一自民党政調会長が毎日新聞とのインタビューで「デモで騒音をまき散らす教員に児童・生徒の尊敬を受ける資格はない。免許はく奪だろう」と語った。教育基本法を「改正」して教員免許を「更新制」にすることに関連しての発言である。三年前、米軍のイラク進出や自衛隊のイラク派兵に反対して、日本では若者たちが、SMAPの「世界に一つだけの花」を歌いながらデモ行進した。「そんなデモに参加した教員は免許はく奪」などということになったら、政府の方針に反対できる教育者はいなくなる。教員たちが政府の方針に従って、生徒たちに「お国のために命を捨てなさい」と教え込んだ戦前への逆戻りが始まることになる。「デモ」を「騒音」としか認識できない政治家を与党のリーダー的地位につけたのは言うまでもなく安倍首相である。

「言論の自由」「表現の自由」は民主主義の基本である。これが侵されれば、民主主義は立ちどころに崩れ去る。いま民主主義が危ない。

コレが言いたい!――選挙の年―――

民主主義はなんといっても「選挙」である。来年春には全国で地方選挙があり、7月には参議院議員選挙がある。健全な民主主義をまもり、有効に機能させる絶好の機会がやってくるのである。いよいよ国民のレベルが問われるのだということを重く受け止めつつ、2007年を迎えたい。

(2006/12/31 執筆)

第12回 企業内ベンチャーに挑もう!

12月 26th, 2006

元記事

自分のアイデアを生かして、事業を興したいと思っている人は少なくない。しかし、安定したサラリーマンの職を投げ打ってまで起業するにはリスクが大きすぎる。そんなジレンマを解消する画期的な仕組みが企業内ベンチャー制度である。

目立ち始めた企業内ベンチャーの成功例

スープストックトーキョー近年、大企業サラリーマンが起業した「企業内ベンチャー」の成功事例が目立っている。たとえば〝スープストックトーキョー〟。

「無添加・食べるスープの店」をコンセプトにしたスープの専門店である。同社は三菱商事㈱で情報系の部署にいた遠山正道氏が、親会社の支援を得ながら起業し、育て上げた会社である。若い女性を中心に人気を集め、今や駅ナカやオフィスビルを中心に全国約30店舗を展開している。

スポーツクラブ ルネサンスまた、全国に90店舗展開する業界大手のスポーツクラブ〝ルネサンス〟も、大日本インキ化学工業㈱に勤める一サラリーマンが起業したものである。

同社の斎藤敏一氏がスポーツ事業部をスタートさせ、これをベンチャー企業として立ち上げた。1979年創業した後、03年にJASDAQに上場。2004年に東証2部に上場し、06年3月には東証一部上場を果たした。現在、売上高288億円、従業員441名を有する大企業となっている。

「コレが言いたい」の第12回は、成功事例が散見されはじめた企業内ベンチャーについてみてみることにしよう。

企業内ベンチャー〟とは…

そもそも「企業内ベンチャー」とは、おもに大手企業の社員が社内の経営資源を活用しつつ、自らの創造性を発揮して起業するもの。それは、いわゆるサラリーマンがサラリーマンでありながら「一国一城の主」となることのできる仕組みだといってよい。

最近では、多くの大手企業がこれを制度化し、社員から新規の事業計画を募集し、将来性があるものを支援して積極的に企業内ベンチャーを促進しようとしている。リコー・松下電器産業・東京ガス・JTB・三菱商事・富士通・花王・シチズン・東京電力・NEC・NTT・3M・ソニー・東急不動産などがそうした制度を設けている。

(株)帝国データバンクから企業内ベンチャー「(株)帝国データバンクフュージョン」を起こした萩原直哉同社代表取締役社長は自身の経験を次のように語っている。

「帝国データバンクで調査員を5年間やっていて、相手先である中小企業の社長や財務担当者から信用調査以外の話、企業を買いたい・売りたい、事業提携したいといった話をよく耳にした。こうしたニーズを何とか事業化できないかと考えました」――萩原氏は、中小企業のM&A仲介を行なう会社を起業することを思い立ち、上司に提案した。帝国データバンクはこの提案を積極的に受けとめ、出資をはじめとして積極的に支援した。

帝国データバンクフュージョンが業務としている中小企業を対象とするM&Aの仲介は案件のロットが小さいにもかかわらず、情報収集などにコストと手間暇がかかるため、これを事業として採算に乗せるのは難しいと言われている。しかし、帝国データバンクフュージョンは、親会社である帝国データバンクの調査員から得られる情報を活用するなどによって低コスト化を実現し、立ち上げてわずか半年足らずで黒字を達成した。

企業内ベンチャーのメリット

「企業内ベンチャーのメリットは、親会社のバックボーン、看板を使えること。私たちのような小さな会社が突然会社訪問しても、通常なら受付で断られてしまいます。でも、帝国データバンクの名前を出せば、担当者は会ってくれます。もう一つのメリットはやはり資金。私たちの会社の資本金は5000万円ですが、サラリーマンである私たちがこんな金額をファイナンスもせずに使えるのは企業内ベンチャーならではと言えます」。

萩原氏がこう語るように、立ち上げに必要な資本金の調達や人材等経営資源の入手が比較的容易であること、また借り入れや営業において親企業の信用力やネームバリューが活用できることなど、「何もない」ところから始まる「独立型ベンチャー」に比して「企業内ベンチャー」の優位性は否定しがたい。

企業内ベンチャーのメリット

親会社にとっての企業内ベンチャーのメリット

一方、親会社にとっても、企業内ベンチャーを推進することにはメリットがある。松下電器産業㈱パナソニック・スピンアップ・ファンド推進室の水間隆室長は次のように語っている。

「松下電器はもともと創業者を含めて、ベンチャー精神にあふれた会社。社員一人ひとりに事業意識・企業家意識・経営意識を持ってほしい。しかし、大きな会社の中で大きな事業を営んでいると、自分が相対的に小さく見えてしまうものです。そこで、自分の手で 何か新しい事業を起こしたいと社員が思うとき、それを実現できる機会を会社が提供する必要があります。どうぞチャレンジしてくださいと。そういうことを通じて社員に自分の役割の大きさを実感してもらう。企業内ベンチャーで設立された会社を見ると、福祉をはじめ、社会貢献を立派に果たしている会社が多い。これは、松下本社のブランドイメージの向上にもつながります」。

親会社のメリット

パナソニック・スピンアップ・ファンドは、100億円を積み立てて作った第一次ファンド(01年4月~04年3月)で、一件あたり上限5億円まで出資が可能。年2回企業内ベンチャーの希望を募ってきたが、これに350名の社員が応募し、すでに19社が発足した。現在、二次ファンド(50億円)で企業内ベンチャーを募集しており、15社の設立を目標としている。

〝企業内ベンチャー〟を起こすことの難しさ

ところか、実際には我が国の起業内ベンチャーは、必ずしも十分な展開が見られなかった。その理由も数多く指摘されている。

企業内ベンチャーを輩出する企業が社員間の処遇のバランスを考慮するあまり、創業者へのインセンティブを低く設定するため、起業へのモチベーションが制限される。

起業経験のない既存企業の役員らによる事前チェックでは「起業の芽」がつぶされてしまう可能性が高い。

安定志向の強い大企業サラリーマンの中からは起業志向の人材を得ることがそもそもむずかしい。

起業後の親企業の過度の干渉がベンチャー企業の成長の妨げになっている・・・などである。

企業内ベンチャーの難しさ

コレが言いたい!
――サラリーマンよ 挑戦しよう!――

こうした諸々の困難や制度的問題が克服され、数多くの企業内ベンチャーが出現し、その活発な活動が継続されるようになるためには、企業内ベンチャー創業者やそれを企図する「潜在的起業家」たち、また企業内ベンチャーの輩出に努力する既存企業の関係者、あるいは企業内ベンチャーに関心を寄せる研究者など、多くの人々が体験交流、情報交換あるいは調査・研究活動を行い、その成果を社会に積極的に情報発信していく「場」が不可欠である。こうした問題意識に基づき、有志たちによって「企業内ベンチャー推進協議会」が設立され、隔月で交流会を実施している(実は、現在私は同協議会の会長を務めている)。

自分のアイデアを生かして、事業を興したいと思っているサラリーマンは少なくない。日本の大企業は優秀な人材を抱え込みながら、その能力を十分に活かしきっていないとする指摘もある。上記の「企業内ベンチャー推進協議会」なども活用しながら、ぜひ多くのサラリーマンたちに起業への挑戦を試みてもらいたいものである。それが、既存企業の活性化を含め、より力強い日本経済を実現することになると思われるからである。

(2006/12/26 執筆)

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