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山口ブログ№8 [2016.6.27]

6月 27th, 2016

英EU離脱問題~今言える2つのこと~

英国民投票でEU離脱派が勝利
英国の国民投票直前には
EU残留派優勢という世論調査も出ていましたから、
多くのマーケット関係者にとって
離脱派の勝利という結末は
まったく想定外の出来事でした。
そのため、市場は大きなショックに
見舞われることになりました。

しかし、その動揺も数日でひとまず収まり、
現在は英とEUとの「離脱交渉」が
今後どのような展開を見せるかに
多くの人々の関心が集まっています。

そもそも、英国会の承認が得られて
本当にEU離脱が実現するのかどうかさえあやしい
とする意見もあるほどですから、
今後を予想することは極めて難しいことです。

とはいえ、少なくとも、以下の2つのことは
「今でも言える」のではないかと私は思っています。

最終的には「自由貿易協定」の締結へ
その1つは、
英国が離脱通告をすれば、EUとの間で厳しい
離脱交渉が始まることになりますが、
それでも、最終的には
両者は「自由貿易協定」を結び、
両者間の貿易関税はゼロに近いところで
落ち着くことになるのではないかということです。

そんな馬鹿な!
と思う方もおられるでしょう。

英国は移民の流入に制限を加えるために、
「モノの自由な移動」が保証されているEUを
自ら飛び出しました。
その英国とEUが「自由貿易協定」を
結ぶことになれば、EUは英国に
「いいとこ取り」をされてしまったことになる。
――そんなことをEUが許すはずがない。

それを許せば、EU域内の離脱派が
英国の真似をして、
「ウチも、ウチも」と騒ぎ始め、
EUそのものが瓦解してしまう。

こんな風に思われている方は
少なくないと思います。

EUにとって英国は重要な輸出先

でも、英国はEUにとって
もっとも重要な貿易相手国の1つだということを
頭に置いておく必要があります。
しかも、EUからすれば輸出の方が輸入よりも多い。
2014年でいえば、
EUは英国に2240億ポンド輸出し、
英国から1480億ポンド輸入しました。

そういう「お得意さん」ともいえる英国に対して、
自ら高い関税をかけて
「輸出をしにくくして、マーケットを減らす」のは、
EUにとって極めてばかばかしい選択です。

さらに、仮に「自由貿易協定」を結んで、
関税をゼロに近づけたとしても、
EUを離脱したことで
英国にとっては様々な障壁ができることになり、
必ずしも「いいとこ」だけを「取る」ことにはならない
という点も理解しておく必要があります。

たとえば、関税ゼロの適用を受けるためには、
英国は「英国内で作られた商品」であることを
輸出の際に証明することが必要になります。
いわゆる原産地証明というものですが、
EU内にとどまっていれば、
英国内の企業はそういうコストを負わなくてすみました。

また、たとえば
これは金融機関などに影響してきますが、
イギリス国内で一度許認可を得さえすれば、
これまでであればEU域内どこの国でも
それが通用してビジネスが行えたのですが、
離脱後はそういうわけにはいきません。

また、EU域内に進出した英国の企業や金融機関は、
EUのルールに従わなければなりませんが、
これまでであれば、そのルール作りに
英国も関わることができました。
しかし、離脱後はもはや口出しできなくなります。
将来英国の企業や金融機関にとって不利なルールが
課せられることになっても、文句はいえません。

こうした様々な障壁やリスクを嫌って、
今後英国に参入してくる企業の数が大きく減少しまうとか、
あるいは今英国にいる企業や金融機関が
英国を去ってEUに出て行くようなことになれば、
いくら自由貿易協定を結んでいても、
英国経済は打撃を受けます。

今後は、そうした関税以外の細々としたことが
EUと英国との間の「交渉事」としてテーブルに
乗せられていきます。
その結果次第では、
EU域内の離脱派が元気づく可能性もありますから、
この点については、
EU側は慎重に交渉を進めることになるでしょう。

しかし、「自由貿易協定」そのものについては
おそらく締結の方向に向かうと思われますし、
その他の交渉においても
英国経済を著しく停滞させてしまうことは
EUにとっても好ましいことではありませんから、
それなりに時期を選びながら、
――言い換えると、域内各国の選挙日程や
「離脱派」の動きなどを見据えながら――
遅かれ早かれ「大人の決着」がなされていくものと思われます。

結論的には、英国のEU離脱が、
世間で取り沙汰されているような
世界経済の大きな混乱ないし低迷要因になることはないし、
これを機にEUが崩壊に向かうなどということもない
と考えています。

ただ、離脱が実行されれば、
それがきっかけとなって、
長期的には、英国経済の国際的な地位の低下が
徐々に進行していくことは
避けられないとは思っています。

残されるもの――それは「円高」
「それなら、心配はいらないね」
ということにはならないのが、
“日本にとって”の「離脱問題」です。

というのは、今回の離脱騒動で
一気に進行した円高が、
新たな1つの水準として、
定着してしまう可能性が高いからです。

さきほど「今でも言える2つのこと」と書きましたが、
この「円高の定着」というのが、
その2つ目にほかなりません。

離脱騒ぎで英国(ポンド)や
EU(ユーロ)からお金が逃げだして、
ドルや円に向かっていきました。
その結果、ポンドやユーロに対して
ドルが上昇し、さらにそのドルに対して
円が上昇するということが起きました。

今後、英国とEUとの間で「離脱交渉」が行われ、
一定の方向性が見えてきたとしても、
それを期待して、お金が、円から
ポンドやユーロへと戻っていって
元通りになるかといえばそれは難しい、
したがって、ドル対して円が
再びかつての円安水準にまで戻るのも
難しいと思われるからです。

なぜか――
第1に、英国とEUとの「交渉」は
完全に決着するまでには数年を必要としますから、
仮に交渉過程で、ある程度「落し所」が
見えてきたとしても、多かれ少なかれヨーロッパには
不安定要因がかなりの期間残されることになるからです。
ですから、安全な通貨としての「円への志向」は
なかなか払しょくできません。

第2には、そういう不安定さを配慮して、
アメリカの金利再引き上げが
さらに延期される可能性があるからです。
これは、金利引き上げによってドルが上昇することを見込んで
ドルを持っていた投機筋に
「ドル売り=円買い」を促す要因になります。

こうして、現在の1ドル=101~105円という水準が
定着してしまうことになれば、安倍政権下で
一部大企業に見られた「円安バブル」ともいえる現象は
完全に終止符を打たれることになります。

その意味では、英国のEU離脱は、
アベノミクスに「最後のとどめをさす」役割を
担うことになります。

これを機に、円安への甘い期待を捨て、
日本経済は「新しいあり方」を求めて
模索を始めなければなりません。

国民がそのことに気づけば、
それが参議院選挙の結果にも
影響することになりますが、
はたしてそれはどうでしょうか。

日本国民の問題意識が問われます。

山口ブログ№7 [2016.5.31]

5月 31st, 2016

世論と政府、どっちが狡猾なのか
~消費増税先送りが意味するもの~

増税延期で政権支持率大幅アップ
安倍首相は来年4月に予定されていた
消費増税の再延期を決めました。

「再び延期することはない。
ここで皆さんにはっきりと
そう断言いたします」と
14年11月に発言したことも、
「必ずや」(増税が可能な)「経済状況をつくり出す」
と断言したことも棚に上げ、
本人は何ら責任を取らないままの再延期です。

サミットの場で「リーマンショック前後に似ている」と
発言し、この現状判断を各国首脳も「共有」したから
という理由で、増税再延期を正当化しています。
でも、これが「こじつけ」でしかないことは
だれの目にも明らか。各国首脳や外国メディアからも
「こじつけ」ぶりに批判が上がっています。

何よりも、政府自身がいまだに日本の景気は
「ゆるやかな回復が続いている」としています。
この景気判断と増税再延期は明らかに矛盾しています。
政府は、この景気判断を取り下げて、
素直に「日本の景気は悪化しつつある。
ここで増税するのは危険だ」と言うべきです。

それを言わないのは、ただただ
「アベノミクスが失敗した」と
批判されることを恐れているからにすぎません。

こんな政権を国民はどう思っているのか。
今回の決定で、少しは政権に批判的な人たちが増えるのでは
――と思いきや、結果は真逆。
直近の世論調査で政権支持率は大幅にアップしました。

政権としては大成功。「筋が通ろうが、通らまいが、
国民は増税再延期を喜んでいる。これで参議院選挙も安泰」。
安倍首相はそう思っているに違いありません。
「世論誘導なんてチョロイ」と思っているかもしれません。

しかし、ちょっと見方を変えると、
この事態はまったく逆に見えます。
というのは、今回の決定は、
安倍政権の方が「世論によって見事に誘導されている」
ともいえるからです。

「世論」に誘導される安倍政権
「再び延期することはない」と断言した首相が、
なぜ再延期を決定せざるを得なくなったのか。
それは4月増税に反対する世論が高まってきたからです。
共同通信社が4月末に行った世論調査では
「反対」が64.6%。
昨年12月調査の50.0%から大幅な上昇です。

同調査では「アベノミクス」で
景気回復を「実感していない」との答えも
81.4%に達していて、
このまま消費増税の再延期なしに
参議院選挙に突入すれば、
国民の反発を招いて与党が思わぬ「敗北」を喫する
可能性さえあったのです。

こんな具合に、最近の安倍政権では
世論に押されて「妥協」を余儀なくされる
という事態が続いています。

最初は冷たい反応をしていた保育園・保育士問題では、
国民からの批判の高まりに慌てて
付け焼刃的とはいえ「対策」を打ち出しました。
また、沖縄の辺野古問題では「粛々と工事を進める」と
言っていたにもかかわらず、世論の批判を無視できず、
急きょ方針を転換してひとまず工事を中止しました。

では、なぜこんな風に安倍政権は世論を気にして、
「妥協」めいたことを繰り返しているのでしょうか。

それは、集団的自衛権の行使や憲法改定という
国民にいまだ不人気な政策を実現しようとしているからです。
そのためには国民からの高い政権支持率が不可欠です。
とくに憲法改定となれば、
議員総数の3分の2を確保する必要があります。

どっちが狡猾なのか、国民世論と政権

では、国民はそういう安倍政権の意向を
受け入れてきているのでしょうか。

今回の増税再延期で、共同通信の5月末世論調査では
政権支持率が前回調査48.3%から55.3%へと
7ポイントも上昇しました。
ところが、同調査では、
安倍首相の下での改憲について
反対が54.9%にのぼり、
賛成35.0%を大きく上回っています。

日本経済新聞社とテレビ東京は
例年憲法記念日を前に世論調査を実施しています。
安倍政権誕生前には憲法を「改正すべきだ」が
「現状のままでよい」を上回っていましたが、
安倍政権誕生後は状況が一変しています。
15年4月に「現在のままでよい」(44%)が
「改正すべきだ」(42%)を逆転し、
さらに本年4月の調査では
「現在のままでよい」との回答が50%に達しました。

世論に妥協してでも政権支持率を引き上げたいと
躍起になってきた安倍政権ですが、
安倍首相が「一番やりたいこと」については
反対に世論の支持を失いつつあるというのが実態なのです。

安倍政権はあの手この手で「世論誘導」を行い、
高い支持率を得て改憲にまでもっていこうとしている。
他方、世論の側は安倍政権にエールを送ることで政策を誘導しつつ、
でも、安倍政権の本当の狙いに対してはノーを突きつけている
――安倍政権と世論、双方に「狡猾さ」を感じるのは私だけでしょうか。

とはいえ、次期の参議院選挙で改憲勢力が3分の2を獲得すれば、
安倍首相は改憲の夢に大きく近づくことになります。
3分の2を取れなければ、
安倍政権は世論に妥協しただけで、
肝心の目的は果たせなかったことになります。

参議員選挙の結果が待たれます。

立教大学教授・スモールサン主宰 山口義行

追伸)
私が企画、出演しているBS11「中小企業ビジネスジャーナル」は
多くのスモールサン企業の協賛で成り立っています。
今回協賛企業として紹介したいのは、株式会社晃商。
とくに同社が経営する「焼肉の天壇(てんだん)」です。
天壇は1965年に京都で誕生した「焼肉の名門」です。
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京都祇園本店はスモールサン・ゼミ京都の会場としても
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東京なら銀座店と赤坂店があります。
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1回の放送で15万円~30万円程度の出費で、
全国にテレビCMが流せます。格安です。

山口ブログ№6 [2016.4.6]

4月 6th, 2016

新年度入りとともに株価大幅下落、なぜ?
~マイナス金利政策の“2つの不思議”~

新年度入り1週間で日経平均1000円下げ

新年度入りした途端、
株価が大幅に下落するという状況が続いています。
3月31日終値16758円をつけた日経平均は、
新年度入りとともに下落し続け、
4月6日の終値は15712円と、
再び16000円を割り込んだ水準で低迷しています。

新年度入り早々の株価大幅下落――
なぜ、こういうことが起きているのか。
今回のブログではその解説を試みます。

景気失速懸念の急浮上

今回の株価下落のきっかけになったのは、
1日発表された3月の日銀短観です。
企業の景況感を示す業況判断指数(DI)が
たとえば大企業製造業でプラス6と
前回(昨年12月)調査を6ポイントも下回りました。

業況判断DIというのは、
景況感が「良い」と答えた企業の割合から
「悪い」と答えた企業の割合を
差し引いて求めたものです。
DI値が6ポイントも下がったのは
「よい」と答えた企業の割合が3%減って、
「悪い」と応えた企業の割合が3%増えたからです。
[ちなみに、全体の74%が「さほど良くない」と応えています]

注目すべきはその水準です。
プラス6という水準は、
13年6月にプラス5となって以来
2年9カ月ぶりの低さです。
つまり、今回の結果は、
アベノミクスが始動した頃の水準にまで
景況感が戻ってしまったことを示したわけです。

「アベノミクスはもう用を成さなくなった」
「景気は後退局面に入ろうとしている」
――そういう感じを抱かせたのが今回の日銀短観でした。
これを受けて株価が下落したわけですから、
これはきわめて正常な反応だったといっていいでしょう。

海外からの需要は円安誘導前の水準に逆戻り
では、日銀短観が示した景況感悪化の背景には
何があるのでしょうか。

2つあると考えられます。

その1つは中国景気の失速を背景とした海外経済の悪化です。
それは、日銀短観でいえば、
海外の製商品需給判断指数(DI)に示されています。
このDIは、「需要超過」と答えた企業の割合から
「供給超過」と答えた企業の割合を引いた値です。
このDI値がマイナス11と
前回調査から2ポイント悪化しました。

マイナス11という水準は
2013年3月調査以来3年ぶりの低さです。
つまり、海外からの需要は、
安倍政権が円安誘導を開始する以前の水準にまで
下がってしまったことを示しています。

一時1ドル=109円台
日銀短観が示した景況感悪化の背景にはもう1つ、
円高の進行があります。
円高は日銀短観発表以降も加速していて、
5日のニューヨーク外国為替市場では、
一時1ドル=109円台後半にまで進みました。
約1年5カ月ぶりの円高水準です。

なぜ円高が進行しているのか。
1つは、FRBは「予定していた金利引き上げを実施できない」
という見方が広がっているからです。

昨年12月にFRBは金利を引き上げましたが、
その際今年は4回程度金利引き上げを実施するとしていました。
そこで、アメリカの金利が上がればドル高になると見込んで、
世界中にばら巻かれていた資金がアメリカ(ドル)に戻ってきました。

ところが、アメリカの経済が予想ほど強くなく、
世界景気も悪化が懸念されている状況では
アメリカも金利を上げられなくなってしまい、
春に予定していた金利引き上げも断念しました。
「今年は金利引き上げを1回もできないのではないか」
という声まで出ています。

「金利引き上げ→ドル高」を期待して
ドルで資金を保有していた投資家たちは、
それが無理だということになれば、
ドルから離れて他の通貨に乗り換えようと動くことになります。

その際、もともと大幅な円安が進んでいた円であれば
「今後これ以上円安になることはない、
とすれば、円安が起きてドルに戻した時に損をする心配もない」、
ということで、
ドルを売って円に買おうという動きが活発になったわけです、
こうして、円高ドル安が進みました。

マイナス金利政策の2つの不思議

こうした動きが強い中では、日銀が円安方向に相場を戻そうとして
マイナス金利政策を実施しても効果はありません。

本来であれば、マイナス金利政策で日本の金利が下がれば、
資金は日本からアメリカに流れますから、
ドル高円安に相場は振れるはずですが、
0.1%くらい金利が下がったくらいでは
上記のような国際的な資金の流れを変えることはできません。

反対に投機筋は、「マイナス金利政策を実施しても
日銀は円高を止めることができなかった」という事実に着目して、
今後円高が進んでも「もはや日銀は打つ手なし」と判断し、
安心して円買いを進めました。
結果としてマイナス金利政策を実施したことで、
ますます円高が進んでしまったのです。

それでも、投機筋は「もしかしたら、
日本政府が円売りドル買いという為替介入を行なって、
円安方向に相場を戻そうとするのではないか」と
心配していたのですが、
昨日安倍首相が自ら
「通貨金利下げ競争を避けるべきだ」と発言したことで、
「日本政府が為替介入する心配はない」と
ますます安心させてしまい、
一気に1ドル=109円台まで円高が進んでしまったのです。

黒田日銀総裁も安倍首相も「円安にしたい」と思っているのに、
「まったく反対の役割を果たしている」のだから、
リーダー失格だといわざるをえません。

マイナス金利政策を実施したのに、
円安ではなく、反対に円高が進んでいくというのは、
一見不思議ですが、
マイナス金利についてはもう1つ不思議なことがあります。

それは、マイナス金利政策を実施したのに、
大手銀行が住宅ローンを引き上げると発表したことです。

マイナス金利政策を受けて、
銀行は当初は住宅ローン金利を引き下げたのですが、
その結果どんどん借り換えが起き、
他方新規のローンが増えないため、
銀行は一方的に利益が減っていくという状況に
追い込まれてしまいました。
そこで、「せめて10年固定の金利だけは上げさせてください」と
なったわけです。

ヨーロッパでもマイナス金利政策を実施してから、
一部の住宅ローン金利が上がるということが起きています。

無理な政策は結局「負の効果」を生んで、
実体経済を傷つけます。
私は、黒田さんや安倍さんに辞めてもらうことが
「最大の景気対策」だと思っているのですが、
これは「言いすぎ」でしょうか。

山口ブログ№5[2016.2.4]

2月 4th, 2016

「空砲」の“弊害”
~マイナス金利政策の負担は国民に!~

1.「三日天下」

前回の山口ブログ№4
「マイナス金利政策は“空砲”だ!」(2016.1.30)で書いたように、
日銀のマイナス金利政策は実質的には効果がなく、
その意味で「空砲」でしかありません。

政策発表後1週間もしないうちに
こうした認識が広がり、
一時上昇した株価も下がり、
円安方向に一旦は大きく振れた円相場も
再び円高方向に戻ってきてしまいました。

2月4日には早くも
株価も円相場もマイナス金利発表前の水準に
戻ってしまっています。
市場の反応という意味での「効果」も、
まさに「三日天下」で終わったことになります。

このように「効果」がない政策であるにもかかわらず、
その「弊害」の方はすでに現れ始めています。
私たちが銀行から受け取る金利が減る。
また銀行に支払う手数料が引き上げられる。
――そういう事態が起きてきているからです。

なぜ、こういうことになるのか、
またこうした弊害は今後も広がるのかなどについて、
以下に私の見解を述べたいと思います。
関心のある人は読んでください。

2.前回の復習から

たんなる「空砲」でしかない政策のために、
なぜこういうことが起きるのか。
これを理解するために、
まずは前回書いたことをちょっと復習しておきます。

マイナス金利が実施されると、
銀行は新たに日銀に国債を売って得た資金を
日銀に預金として積んでおくと
「お金を取られる」ことになります。

かといって、借入需要がないから、
その資金を貸出に回すことはできません。
また、ドルに変えるのにもリスクがあります。

銀行にとって、一番いい方法は、
日銀に国債を売らないことです。
日銀は、銀行が国債を売ってくれなければ、
「資金供給を増やす」量的緩和政策が
継続できなくなってしまいます。

それでは困るので、
日銀はマイナス金利分の「色をつけて」、
民間銀行から通常よりも高い価格で
国債を買い上げることになります。

このことは、言い換えると、
マイナス金利になっても
銀行には「損」は起きないということです。

そうだとすれば、銀行は
マイナス金利政策が施行されたからといって、
無理に貸出を増やす必要もなければ、
為替リスクを負ってまでドルに変える必要もない
ということになります。
これまでどおり、国債の売却代金を
日銀預金として積み増しておいても
「問題なし」ということになります。

だったら、結局何も変わらないじゃないか――

というわけで、
今回の措置は「空砲」だというのが、私の見解です。

3.銀行を「国債の買い手」として見ると

以上は、国債を売る側として銀行を見た場合です。
他方、銀行は国債を買う側でもあります。

国民や企業から預金を預かって、
銀行はその資金で国債を大量に買ってきました。
今後もいい貸出先が見つけられない以上、
預金者に利子を支払うためにも、
国債購入を続けざるを得ません。

ところが、その国債の価格が、
日銀が「色をつけて」買い上げるために、
その分跳ね上がってしまいます。

その影響で、銀行が市場から国債を買う際にも
高い代金を支払わなければならなくなります。
その結果、国債購入という形で資金を運用した際の
「運用利回り」が低下してしまうことになります。

つまり、国債を売る側としては、
日銀の今回の措置で損は起きないのですが、
国債を買う側としては
今回の措置で銀行に損が起きるのです。

4.負担を背負わされるのは国民

そこで、銀行はその「損」、つまり
その運用利回りの低下(利益の減少)を補うために、
私たちの預金金利を引き下げようと考えます。

私たちに支払う預金金利を引き下げれば、
国債運用の利回りが下がっても
今までどおり
預金で集めた資金を国債購入に当てても「問題なし」
ということになるからです。

というわけで、銀行は預金金利の引き下げ、
さらには私たちが銀行に支払うさまざまな手数料を
引き上げたりすることになります。

これは銀行にとっては「合理的」なことですから、
この動きは広がっていく可能性が高いといえます。
黒田総裁は「マイナス金利幅をさらに大きくするかもしれない」
と言っていますが、もしそんなことをすれば
預金金利の引き下げなどもさらに大幅に行なわれることになります。

これは、マイナス金利政策という
実体経済に効果のない「政策の負担」を、
国民が負わされるということにほかなりません。

もちろん、住宅ローン金利や企業への貸出金利が
下がる可能性もありますが、
住宅を買おうとしていない人や、
借入を必要としていない企業にとっては、
そのメリットはなく、
一方的に「損」を負わされるだけです。

マイナス金利政策を発表して
一時株が上がったせいか、
安倍内閣の支持率も上がったようですが、
国民は上記のことを理解していないのだと思います。
「知らぬが仏」とはこのことか――と思ってしまいます。

それからもう一つ、
本当に預金者のことを考えているのなら、
本来真っ先に銀行協会や信用金庫協会が、
黒田日銀に抗議すべきなのです。
それができないのは、いまだに
「おかみ」意識が抜けないからです。

マイナス金利政策を好感して
安倍政権の支持率アップに貢献する国民。
日ごろ儲けさせてもらっている預金者より
黒田日銀総裁の顔を立てることの方を
重視する金融業界。――もう、ため息しか出ません。

山口ブログNo.4「マイナス金利政策は“空砲”だ!」2016.1.30

1月 30th, 2016

日銀のマイナス金利政策は「空砲」だ!

皆さん、新聞などでご承知のように、
昨日(29日)日銀はマイナス金利政策を打ち出しました。
黒田日銀総裁が打ち出す新政策は
たびたび「バズーカ」などといわれてきましたが、
今回のマイナス金利政策は
いわば「空砲」でしかないというのが私の見解です。

以下、興味のある方はお読みください。

現在、日銀預金はおよそ250兆円あります。
そのうちの238兆円には0.1%の金利がつきます。
残りの12兆円は「準備預金制度」といって、
法律で銀行が日銀に預金として置いておくことを義務付けられた額
――これを「所要準備額」といいます――で、
この部分については金利がつきません。つまり、ゼロ金利です。

今回の日銀の措置は、以上のところまではそのままにして、
新たに銀行が日銀預金を積み増したら、
その部分についてはマイナス0.1%の金利をつけるというものです。

したがって、今後銀行が日銀に国債を売って、
その代金を日銀預金として積み増すと、
日銀に「お金(0.1%分)を取られる」ことになります。
結果として、国債を売れば売るほど、
日銀預金全体から銀行が得られる金利は少しずつですが、
低下していくことになります。

このことがどういう影響を与えるかですが、

1.企業や個人への民間銀行の貸出は増えるか――→増えない

民間銀行が日銀に預金すると「お金を取られる」から、
新たな国債の売却代金については、
これを日銀預金にしないで貸出に回すのではないか。
そんな期待がありますが、そうはいきません。

なぜなら、そもそも企業や個人の借入需要がないからです。
借入需要があったらとっくに銀行は貸出を増やしていたはずです。
つまり、今回の処置は実体経済にはほとんど影響を与えないということです。
したがって、中小企業には実質的な影響はありません。

2.円安誘導に役立つか――→効果は限られている

民間銀行が日銀に預金をすると「お金を取られる」からと、
国債の売却代金を日銀預金にしないでドルに変えれば、
円安を引き起こすことになります。

しかし、銀行は為替リスクというものを考慮しなければなりません。

銀行が国債の売却代金をどんどんドルに変えて、
ドル資産を増やしてしまうと、
将来円高(ドル安)が起きた時には、銀行は
マイナス0.1%どころではない大きな損を被ることになります。

銀行がこれまで日銀預金を大量に抱えながらも、
それをドルに変えなかったのは、
そうした為替リスクがあるからです。
日銀預金の一部をマイナス金利にしたからといって、
突然銀行がそういう為替リスクを犯してまで
大量にドル買いに走るとは考えられません。
現在の市場の反応も円高修正に向かいつつあった傾向が
ちょっと止まっているという程度です。

3.日銀が銀行から国債を買えなくなる
――→日銀は0.1%分国債価格に上乗せして買い上げるしかない。

銀行は、日銀に国債を売って得た資金を貸出に回すこともできず、
ドルに変えるのにもリスクがある。かといって、その資金を
日銀預金として積み増せば「お金を取られる」。

となれば、銀行はどうすべきか。
一番いい方法は、日銀に国債を売らないことです。

つまり、マイナス金利などということをすれば、
日銀は国債を買えなくなり、結果として、
「量的緩和政策」自体ができなくなってしまうのです。

もちろん、それは困るので、
日銀はマイナス金利分の「色をつけて」、
民間銀行から通常よりも高い価格で
国債を買い上げることになります。

この点については、日銀自身が今回の措置について、
「マイナス金利分だけ買入価格が上昇(金利が低下)
することで釣り合うので、買い入れは可能」と
解説していることからも明らかです。

このことは、言い換えると、
銀行はマイナス金利になっても「損」は起きないということ、
そのように日銀がやってくれるということです。

そうだとすれば、銀行は
マイナス金利政策が施行されたからといって、
無理に貸出を増やす必要もなければ、
為替リスクを負ってまでドルに変える必要もない
ということになります。
これまでどおり、国債の売却代金を
日銀預金として積み増しておいても「問題なし」ということになります。

だったら、結局何も変わらないじゃないか――

山口義行・公式WEB

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