山口義行・公式WEB

Yamaguchi-yoshiyuki.net

山口ブログ№5[2016.2.4]

2月 4th, 2016

「空砲」の“弊害”
~マイナス金利政策の負担は国民に!~

1.「三日天下」

前回の山口ブログ№4
「マイナス金利政策は“空砲”だ!」(2016.1.30)で書いたように、
日銀のマイナス金利政策は実質的には効果がなく、
その意味で「空砲」でしかありません。

政策発表後1週間もしないうちに
こうした認識が広がり、
一時上昇した株価も下がり、
円安方向に一旦は大きく振れた円相場も
再び円高方向に戻ってきてしまいました。

2月4日には早くも
株価も円相場もマイナス金利発表前の水準に
戻ってしまっています。
市場の反応という意味での「効果」も、
まさに「三日天下」で終わったことになります。

このように「効果」がない政策であるにもかかわらず、
その「弊害」の方はすでに現れ始めています。
私たちが銀行から受け取る金利が減る。
また銀行に支払う手数料が引き上げられる。
――そういう事態が起きてきているからです。

なぜ、こういうことになるのか、
またこうした弊害は今後も広がるのかなどについて、
以下に私の見解を述べたいと思います。
関心のある人は読んでください。

2.前回の復習から

たんなる「空砲」でしかない政策のために、
なぜこういうことが起きるのか。
これを理解するために、
まずは前回書いたことをちょっと復習しておきます。

マイナス金利が実施されると、
銀行は新たに日銀に国債を売って得た資金を
日銀に預金として積んでおくと
「お金を取られる」ことになります。

かといって、借入需要がないから、
その資金を貸出に回すことはできません。
また、ドルに変えるのにもリスクがあります。

銀行にとって、一番いい方法は、
日銀に国債を売らないことです。
日銀は、銀行が国債を売ってくれなければ、
「資金供給を増やす」量的緩和政策が
継続できなくなってしまいます。

それでは困るので、
日銀はマイナス金利分の「色をつけて」、
民間銀行から通常よりも高い価格で
国債を買い上げることになります。

このことは、言い換えると、
マイナス金利になっても
銀行には「損」は起きないということです。

そうだとすれば、銀行は
マイナス金利政策が施行されたからといって、
無理に貸出を増やす必要もなければ、
為替リスクを負ってまでドルに変える必要もない
ということになります。
これまでどおり、国債の売却代金を
日銀預金として積み増しておいても
「問題なし」ということになります。

だったら、結局何も変わらないじゃないか――

というわけで、
今回の措置は「空砲」だというのが、私の見解です。

3.銀行を「国債の買い手」として見ると

以上は、国債を売る側として銀行を見た場合です。
他方、銀行は国債を買う側でもあります。

国民や企業から預金を預かって、
銀行はその資金で国債を大量に買ってきました。
今後もいい貸出先が見つけられない以上、
預金者に利子を支払うためにも、
国債購入を続けざるを得ません。

ところが、その国債の価格が、
日銀が「色をつけて」買い上げるために、
その分跳ね上がってしまいます。

その影響で、銀行が市場から国債を買う際にも
高い代金を支払わなければならなくなります。
その結果、国債購入という形で資金を運用した際の
「運用利回り」が低下してしまうことになります。

つまり、国債を売る側としては、
日銀の今回の措置で損は起きないのですが、
国債を買う側としては
今回の措置で銀行に損が起きるのです。

4.負担を背負わされるのは国民

そこで、銀行はその「損」、つまり
その運用利回りの低下(利益の減少)を補うために、
私たちの預金金利を引き下げようと考えます。

私たちに支払う預金金利を引き下げれば、
国債運用の利回りが下がっても
今までどおり
預金で集めた資金を国債購入に当てても「問題なし」
ということになるからです。

というわけで、銀行は預金金利の引き下げ、
さらには私たちが銀行に支払うさまざまな手数料を
引き上げたりすることになります。

これは銀行にとっては「合理的」なことですから、
この動きは広がっていく可能性が高いといえます。
黒田総裁は「マイナス金利幅をさらに大きくするかもしれない」
と言っていますが、もしそんなことをすれば
預金金利の引き下げなどもさらに大幅に行なわれることになります。

これは、マイナス金利政策という
実体経済に効果のない「政策の負担」を、
国民が負わされるということにほかなりません。

もちろん、住宅ローン金利や企業への貸出金利が
下がる可能性もありますが、
住宅を買おうとしていない人や、
借入を必要としていない企業にとっては、
そのメリットはなく、
一方的に「損」を負わされるだけです。

マイナス金利政策を発表して
一時株が上がったせいか、
安倍内閣の支持率も上がったようですが、
国民は上記のことを理解していないのだと思います。
「知らぬが仏」とはこのことか――と思ってしまいます。

それからもう一つ、
本当に預金者のことを考えているのなら、
本来真っ先に銀行協会や信用金庫協会が、
黒田日銀に抗議すべきなのです。
それができないのは、いまだに
「おかみ」意識が抜けないからです。

マイナス金利政策を好感して
安倍政権の支持率アップに貢献する国民。
日ごろ儲けさせてもらっている預金者より
黒田日銀総裁の顔を立てることの方を
重視する金融業界。――もう、ため息しか出ません。

山口ブログNo.4「マイナス金利政策は“空砲”だ!」2016.1.30

1月 30th, 2016

日銀のマイナス金利政策は「空砲」だ!

皆さん、新聞などでご承知のように、
昨日(29日)日銀はマイナス金利政策を打ち出しました。
黒田日銀総裁が打ち出す新政策は
たびたび「バズーカ」などといわれてきましたが、
今回のマイナス金利政策は
いわば「空砲」でしかないというのが私の見解です。

以下、興味のある方はお読みください。

現在、日銀預金はおよそ250兆円あります。
そのうちの238兆円には0.1%の金利がつきます。
残りの12兆円は「準備預金制度」といって、
法律で銀行が日銀に預金として置いておくことを義務付けられた額
――これを「所要準備額」といいます――で、
この部分については金利がつきません。つまり、ゼロ金利です。

今回の日銀の措置は、以上のところまではそのままにして、
新たに銀行が日銀預金を積み増したら、
その部分についてはマイナス0.1%の金利をつけるというものです。

したがって、今後銀行が日銀に国債を売って、
その代金を日銀預金として積み増すと、
日銀に「お金(0.1%分)を取られる」ことになります。
結果として、国債を売れば売るほど、
日銀預金全体から銀行が得られる金利は少しずつですが、
低下していくことになります。

このことがどういう影響を与えるかですが、

1.企業や個人への民間銀行の貸出は増えるか――→増えない

民間銀行が日銀に預金すると「お金を取られる」から、
新たな国債の売却代金については、
これを日銀預金にしないで貸出に回すのではないか。
そんな期待がありますが、そうはいきません。

なぜなら、そもそも企業や個人の借入需要がないからです。
借入需要があったらとっくに銀行は貸出を増やしていたはずです。
つまり、今回の処置は実体経済にはほとんど影響を与えないということです。
したがって、中小企業には実質的な影響はありません。

2.円安誘導に役立つか――→効果は限られている

民間銀行が日銀に預金をすると「お金を取られる」からと、
国債の売却代金を日銀預金にしないでドルに変えれば、
円安を引き起こすことになります。

しかし、銀行は為替リスクというものを考慮しなければなりません。

銀行が国債の売却代金をどんどんドルに変えて、
ドル資産を増やしてしまうと、
将来円高(ドル安)が起きた時には、銀行は
マイナス0.1%どころではない大きな損を被ることになります。

銀行がこれまで日銀預金を大量に抱えながらも、
それをドルに変えなかったのは、
そうした為替リスクがあるからです。
日銀預金の一部をマイナス金利にしたからといって、
突然銀行がそういう為替リスクを犯してまで
大量にドル買いに走るとは考えられません。
現在の市場の反応も円高修正に向かいつつあった傾向が
ちょっと止まっているという程度です。

3.日銀が銀行から国債を買えなくなる
――→日銀は0.1%分国債価格に上乗せして買い上げるしかない。

銀行は、日銀に国債を売って得た資金を貸出に回すこともできず、
ドルに変えるのにもリスクがある。かといって、その資金を
日銀預金として積み増せば「お金を取られる」。

となれば、銀行はどうすべきか。
一番いい方法は、日銀に国債を売らないことです。

つまり、マイナス金利などということをすれば、
日銀は国債を買えなくなり、結果として、
「量的緩和政策」自体ができなくなってしまうのです。

もちろん、それは困るので、
日銀はマイナス金利分の「色をつけて」、
民間銀行から通常よりも高い価格で
国債を買い上げることになります。

この点については、日銀自身が今回の措置について、
「マイナス金利分だけ買入価格が上昇(金利が低下)
することで釣り合うので、買い入れは可能」と
解説していることからも明らかです。

このことは、言い換えると、
銀行はマイナス金利になっても「損」は起きないということ、
そのように日銀がやってくれるということです。

そうだとすれば、銀行は
マイナス金利政策が施行されたからといって、
無理に貸出を増やす必要もなければ、
為替リスクを負ってまでドルに変える必要もない
ということになります。
これまでどおり、国債の売却代金を
日銀預金として積み増しておいても「問題なし」ということになります。

だったら、結局何も変わらないじゃないか――

山口ブログ№3「年明け早々の株価急落に思う」2016.1.8

1月 8th, 2016

年明け早々の株価急落に思う

――以下、かなり長い文章ですが、
関心のある方はお読みくださいーー

 昨年12月30日に19,033円をつけた日経平均が、
1月4日の大発会以来4日連続で下落しました。
大発会から4日連続の下落は21年ぶりのことだそうです。
しかもその下落も大幅で、1月7日の終値は17,767円。
たった4日間で1,266円も下落しました。
8日も引き続き下落し、17,697円で引けました。

株は上がったり下がったりが当たり前ですから、
そのたびにコメントする必要もありませんが、
この大幅な落ち込みについては、以下に簡単に
私の「思うところ」を述べてみたいと思います。
というのは、この株価下落は
「北朝鮮の核実験の影響」などでは断じてなく、
明らかに世界経済の景気局面の変化を
反映していると考えられるからです。
 

最近の日本株下落の直接の要因は3つあります。

 1つは、アメリカ経済の現状と先行きに
「不安」が生じていることです。

その「不安」の背景には世界景気の局面変化があります。
中国経済の落ち込みをきっかけにした世界経済の停滞、
しかもそれが長引きそうだという予測が
原油価格の下落を引き起こし、
それが米国エネルギー産業の収益悪化を生んで
米国株の下落を引き起こしています。
また世界経済の悪化とドル高を反映して
アメリカの製造業が元気を失っています。
米国製造業の景況を示すISM製造業景況指数が、
11月、12月と2か月連続で
「活動の拡大と縮小の境目」である50を割り込みました。
1月4日に発表された12月の指数は48.2です。
これはなんと2009年以来の低水準です。
さらに、先月FRBが実施した「利上げ」の影響か
どうかはまだわかりませんが、
最近は住宅ローン申請件数が減少してきています。
こうした事情を反映して、
アメリカ経済の現状と先行きに悲観ムードが漂い始めました。
このことが米国株(ダウ平均)の下落を引きおこし、
これが日本株の下落に波及しているという関係にあります。
 
2つ目は、いうまでもなく
中国経済の落ち込みを反映した中国株の下落と人民元安です。

1月4日日経平均が1日で400円超下落しましたが、
その背後には同日の上海市場で株価が7パーセント近く下落し、
株取引の停止措置(サーキットブレイカー)が
実行されたことがありました。
また、7日日経平均が423円下落しましたが、
これも同日中国株が7パーセント下落し、
取引停止措置が発動されたことを反映しての下落でした。
こうした中国株の下落の背後には
中国経済の落ち込みがあることは言うまでもありません。
中国経済の落ち込みが人民元の切下げを生み、
その人民元の下落を嫌気したマネーが中国から逃げ出している、
その逃避の過程で中国株が売られているという関係にあります。
 
日本株下落の3つ目の要因は、円高の進行です。
昨年12月号のスモールサンニュースの「景気を読む」で、
アメリカの「利上げによって新興国から資金が流出し、
その資金が比較的安全だとされる円に集まれば、
逆に円高ドル安が進む可能性」があることを指摘しましたが、
新興国からだけでなく、
世界景気の局面変化を反映した株価下落によって、
株式投資に回っていた米国マネーまでもが、
「安全」だとみなされている「円」に避難してきており、
結果として円相場は1ドル=118円を割る局面にまで上がってきました。
そうなれば、円安依存で上げてきた日経平均が
下落するのは当然ということになります。

最後に、スモールサンニュースなどで
繰り返し指摘してきたように、
昨年夏ごろまでに機能した
「公的資金による株価の引き上げ」という
一種の「偽装工作」が限界に達している
という事実についても指摘しておかなければなりません。
「年金基金」による日本株の購入がすでに
目標枠である25パーセント(資産運用の日本株構成比)に
達してしまったために、
売り圧力に抗して株価を引き上げることが
できなくなってしまっているのです。
日本銀行は昨年11月以降3〜4日おきに369億円ずつ
株(株式運用ファンド)を買い続けていますが、
これだけでは株価の水準を引き上げるのには力不足です。
 
上記のような株価下落要因は、
それが世界景気の局面変化を反映したものであるがゆえに、
簡単には好転しません。
その限りでは、上下運動を繰り返しながらも、
水準が切りあがる様な株価上昇局面の到来は
当面期待できないと言っていいと思います。
というよりも、ようやく株価が経済実態を
反映し始めたと言ったほうがいいかもしれません。

 昨年末のスモールサンニュースで
2015年の漢字は「偽」とすべきであり、
それに対し、今年は「真」とすべき状況になると述べましたが、
まさに経済の「真実」が
株式市場などにも反映され始めたという意味で、
予想通りの展開が現実になり始めたというのが
最近の株価動向を見ての私の「感想」です。

みなさんはどのように考えられるでしょうか。
ご意見ご質問感想などをお寄せいただければ幸いです。

山口ブログ№2 [2015.9.28]

9月 28th, 2015

怒りさえ覚えます―都合が悪くなったら景気判断を示さない政府

(立教大山口)

調査の結果が自分たちの意向と違っていたら、ノーコメントを決め込む。
そんな政府、皆さんは信用しますか? 私は怒りさえ覚えます。

政府が毎月「月例経済報告」というものを発表していることは皆さん御存知だと思います。
9月の「月例経済報告」が示した景気の基調判断は、「このところ一部に鈍い動きもみられるが、緩やかな回復基調が続いている」というものでした。

8月は「このところ改善テンポにばらつきもみられるが、緩やかな回復基調が続いている」というものでした。

こんな具合に、言葉遣いを微妙に変えることで、景気の変化を示すというのがこの「報告」のやり方です。とはいえ、言葉だけではわかりにくいので、政府は、その都度、景気判断を先月より「上方修正」したのか、「下方修正」したのか、あるいは「据え置き」(横這い)にしたのかを発表してきました。

「改善テンポにばらつき→一部に鈍い動き」という8月から9月への変化は、誰が見ても「下方修正」ですよね。「改善」という言葉が消え、「鈍い動き」という言葉が出てきたのですから。マスコミも「実質下方修正」と書いています。

ところが、今回に限って、政府は「前月よりも景気は弱いが、据え置きでも下方修正でもない」という意味不明のコメントをして、判断を避けてしまったのです。

こんなことは前代未聞です。一体どういうことなのでしょうか。

「(安倍晋三首相が)アベノミクス第2ステージといった直後に下方修正とはいえなかったのだろう」――日経新聞はこんな旧経済企画庁OBの言葉を載せています。そして、「経済指標が上向いたときだけ上方修正するとなれば、信頼性が損なわれかねない」と、日本経済新聞にしてはめずらしく、安倍政権を批判しています。

権力者「安倍晋三」のご機嫌を損なうようなことはやらない――権力者の顔色を伺うことばかりに神経を使う「忖度(そんたく)政治」。与党自民党からも批判が出てしかるべきですが、誰も批判しません。こんな政治が長期化すれば、いずれデータそのものも書き換えられかねません。こんな政権をまだ4割もの国民が支持しているのは、私には危険としか思えません。

もはや「緩やかな改善」という判断そのものがインチキだということを、私はくりかえし強調してきました。今回の政府の醜態ぶりは、私の指摘の正しさを物語っていると感じています。

私の主張については、
スモールサン経済解説動画「『景気を読む』を読む」(閲覧方法は事務局から会員諸氏にメールしました)
あるいは10月5日(23時~24時)のBS11「中小企業ビジネスジャーナル」をご覧下さい。

山口ブログ№1 [2015.9.24] 

9月 24th, 2015

「今、経済環境が大きく変わりつつある」と訴えました。

今、私たちをとりまく経済環境は大きく変わりつつある。
一言で言えば、歴史的転換点にいる。
そういう時代感をもって経営に取り組んで欲しい。
――このことをスモールサンの皆さんに訴えたいと思い、
昨日、会員限定インターネットテレビで
経済解説番組「『景気を読む』を読む」を放映いたしました。

「快晴の連休最終日、はたしてパソコンの前にどれだけの人がいるのか」
という状況ではありましたが、
それでも100名を超える方々がご覧になられていたようで、
大変うれしく思いました。

私もフリップを14枚用意して、真剣勝負で挑みました。
「景気の現状分析」、「株価下落の背景」、「けん引役を失った世界経済」と、
ほぼ50分間喋り続けました。
ゼミ東京の町田さんからは、番組内で質問を受けもしました。

経営者の「読む力」を引き上げたい
ーーこれはスモールサンの基本理念です。
そのためには「やれることはすべてやる」
という気持ちでがんばっています。

それでも、64歳になって、
「老骨鞭打つ」という感覚が日々大きくなってきています。
だからこそ、
1000人を超える会員の方に観ていただきたかったというのが本音です。

昨日見損なった方々は、
10月5日(23時~24時)に放映されるテレビ番組
BS11「中小企業ビジネスジャーナル」をぜひ観してください。

私が経済情勢を解説するという、昨日と同じ試みを番組で行います。

山口義行・公式WEB

Yamaguchi-yoshiyuki.net