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山口ブログ№6 [2016.4.6]

4月 6th, 2016

新年度入りとともに株価大幅下落、なぜ?
~マイナス金利政策の“2つの不思議”~

新年度入り1週間で日経平均1000円下げ

新年度入りした途端、
株価が大幅に下落するという状況が続いています。
3月31日終値16758円をつけた日経平均は、
新年度入りとともに下落し続け、
4月6日の終値は15712円と、
再び16000円を割り込んだ水準で低迷しています。

新年度入り早々の株価大幅下落――
なぜ、こういうことが起きているのか。
今回のブログではその解説を試みます。

景気失速懸念の急浮上

今回の株価下落のきっかけになったのは、
1日発表された3月の日銀短観です。
企業の景況感を示す業況判断指数(DI)が
たとえば大企業製造業でプラス6と
前回(昨年12月)調査を6ポイントも下回りました。

業況判断DIというのは、
景況感が「良い」と答えた企業の割合から
「悪い」と答えた企業の割合を
差し引いて求めたものです。
DI値が6ポイントも下がったのは
「よい」と答えた企業の割合が3%減って、
「悪い」と応えた企業の割合が3%増えたからです。
[ちなみに、全体の74%が「さほど良くない」と応えています]

注目すべきはその水準です。
プラス6という水準は、
13年6月にプラス5となって以来
2年9カ月ぶりの低さです。
つまり、今回の結果は、
アベノミクスが始動した頃の水準にまで
景況感が戻ってしまったことを示したわけです。

「アベノミクスはもう用を成さなくなった」
「景気は後退局面に入ろうとしている」
――そういう感じを抱かせたのが今回の日銀短観でした。
これを受けて株価が下落したわけですから、
これはきわめて正常な反応だったといっていいでしょう。

海外からの需要は円安誘導前の水準に逆戻り
では、日銀短観が示した景況感悪化の背景には
何があるのでしょうか。

2つあると考えられます。

その1つは中国景気の失速を背景とした海外経済の悪化です。
それは、日銀短観でいえば、
海外の製商品需給判断指数(DI)に示されています。
このDIは、「需要超過」と答えた企業の割合から
「供給超過」と答えた企業の割合を引いた値です。
このDI値がマイナス11と
前回調査から2ポイント悪化しました。

マイナス11という水準は
2013年3月調査以来3年ぶりの低さです。
つまり、海外からの需要は、
安倍政権が円安誘導を開始する以前の水準にまで
下がってしまったことを示しています。

一時1ドル=109円台
日銀短観が示した景況感悪化の背景にはもう1つ、
円高の進行があります。
円高は日銀短観発表以降も加速していて、
5日のニューヨーク外国為替市場では、
一時1ドル=109円台後半にまで進みました。
約1年5カ月ぶりの円高水準です。

なぜ円高が進行しているのか。
1つは、FRBは「予定していた金利引き上げを実施できない」
という見方が広がっているからです。

昨年12月にFRBは金利を引き上げましたが、
その際今年は4回程度金利引き上げを実施するとしていました。
そこで、アメリカの金利が上がればドル高になると見込んで、
世界中にばら巻かれていた資金がアメリカ(ドル)に戻ってきました。

ところが、アメリカの経済が予想ほど強くなく、
世界景気も悪化が懸念されている状況では
アメリカも金利を上げられなくなってしまい、
春に予定していた金利引き上げも断念しました。
「今年は金利引き上げを1回もできないのではないか」
という声まで出ています。

「金利引き上げ→ドル高」を期待して
ドルで資金を保有していた投資家たちは、
それが無理だということになれば、
ドルから離れて他の通貨に乗り換えようと動くことになります。

その際、もともと大幅な円安が進んでいた円であれば
「今後これ以上円安になることはない、
とすれば、円安が起きてドルに戻した時に損をする心配もない」、
ということで、
ドルを売って円に買おうという動きが活発になったわけです、
こうして、円高ドル安が進みました。

マイナス金利政策の2つの不思議

こうした動きが強い中では、日銀が円安方向に相場を戻そうとして
マイナス金利政策を実施しても効果はありません。

本来であれば、マイナス金利政策で日本の金利が下がれば、
資金は日本からアメリカに流れますから、
ドル高円安に相場は振れるはずですが、
0.1%くらい金利が下がったくらいでは
上記のような国際的な資金の流れを変えることはできません。

反対に投機筋は、「マイナス金利政策を実施しても
日銀は円高を止めることができなかった」という事実に着目して、
今後円高が進んでも「もはや日銀は打つ手なし」と判断し、
安心して円買いを進めました。
結果としてマイナス金利政策を実施したことで、
ますます円高が進んでしまったのです。

それでも、投機筋は「もしかしたら、
日本政府が円売りドル買いという為替介入を行なって、
円安方向に相場を戻そうとするのではないか」と
心配していたのですが、
昨日安倍首相が自ら
「通貨金利下げ競争を避けるべきだ」と発言したことで、
「日本政府が為替介入する心配はない」と
ますます安心させてしまい、
一気に1ドル=109円台まで円高が進んでしまったのです。

黒田日銀総裁も安倍首相も「円安にしたい」と思っているのに、
「まったく反対の役割を果たしている」のだから、
リーダー失格だといわざるをえません。

マイナス金利政策を実施したのに、
円安ではなく、反対に円高が進んでいくというのは、
一見不思議ですが、
マイナス金利についてはもう1つ不思議なことがあります。

それは、マイナス金利政策を実施したのに、
大手銀行が住宅ローンを引き上げると発表したことです。

マイナス金利政策を受けて、
銀行は当初は住宅ローン金利を引き下げたのですが、
その結果どんどん借り換えが起き、
他方新規のローンが増えないため、
銀行は一方的に利益が減っていくという状況に
追い込まれてしまいました。
そこで、「せめて10年固定の金利だけは上げさせてください」と
なったわけです。

ヨーロッパでもマイナス金利政策を実施してから、
一部の住宅ローン金利が上がるということが起きています。

無理な政策は結局「負の効果」を生んで、
実体経済を傷つけます。
私は、黒田さんや安倍さんに辞めてもらうことが
「最大の景気対策」だと思っているのですが、
これは「言いすぎ」でしょうか。

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