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第15回 中小企業の後継者問題 解決策は?

4月 27th, 2007

元記事

今、後継者がいないという理由から、廃業に追い込まれる中小企業が急増している。これにより、中小企業の優れた技術や多くの雇用が失われ、日本経済に与える損失も甚大なものがある。なぜ今、中小企業の後継者問題がこんなにも深刻化しているのか。

深刻化する「後継者問題」

モノづくり大国、日本を支えてきた中小企業。日本の経済成長とともに、幾多の荒波を乗り越え、高度な製品を開発し、世界に送り出してきた。しかし今、会社の存続に関わる「後継者問題」が浮上している。一般的に「後継ぎ」とされてきた経営者の子供たちが、親の会社を引き継ぐことに躊躇している。後継者がいないことで廃業に追い込まれる中小企業は、なんと年間7万社にものぼると推計される。

景気回復が報じられ、ようやく息を吹き返したかのように見える日本経済。その一方で、中小企業の後継者難という深刻な事態に直面している。「コレが言いたい」の第15回は、中小企業の後継者問題を取り上げることにしよう。

後継者不在で廃業

『中小企業白書』によれば、後継者がいないために廃業する企業は、年間7万社にのぼり、それによって毎年20万から35万人の雇用が失われている。

図表1に示されるように、「自分の代で廃業したい」と回答した企業のうち、24.4%が「適切な後継者が見当たらない」ことを理由にしている。この割合を年間廃業社数28.9万社に乗じた数字が、上記の7万社という推計値である。

(図表1)自分の代で廃業を検討する理由図1 自分の代で廃業を検討する理由

また、経営者の平均年齢は年々上昇し、2004年には58.5歳となっている(図表2)。ほとんどの経営者が60歳代でリタイアすることを考えると、今後後継者問題が日本経済にきわめて深刻な事態を引き起こすであろうことは疑いを入れない。それは、すでに下請け企業の廃業という形で大企業にも影響を及ぼしつつある。

(図表2)資本金規模別の代表者の平均年齢の推移図2 資本金規模別の代表者の平均年齢の推移

子供が後継者になりたがらない理由

後継者に関する実態調査によると、20年前には経営者の子供が後を継ぐケースが8割近くを占めていた。しかし、近年はその割合が年々低下し、今や全体の4割強にまで低下している(図表3)。このように親族内承継が困難になったことが、後継者不足を引き起こしている重要な要因のひとつである。

(図表3)事業承継者の推移図3 事業承継者の推移

では、子供はなぜ親の事業を引き継ごうとしないのか。図表4に示されるように、その最大の理由は「親の事業に将来性・魅力がない」というもの。たしかに、この10年あまり中小企業をめぐる経営環境は大きく悪化し、倒産件数も高い数字が続いてきた。それを目の当たりにした子供たちが、親の会社を継ぐことに躊躇するのも至極当然ことである。経営者である親の側も、自分と同様の苦労をわが子に味わわせたくないという思いから、会社を継がせることに腰が引けている。

(図表4) 子供が親の事業を継がない理由図4 子供が親の事業を継がない理由

したがって、事業承継問題を根本的に解決するためには、中小企業をめぐる経営環境を改善し、若者たちの事業承継意欲を喚起することだということになる。しかし、「親の事業に将来性・魅力がないなら、自分が会社を引き継ぐことでその将来性や魅力を高めてみせる」という気概が、今の若者たちに欠けていることも大いに問題である。そうした若者の意識改革にも取り組む必要がある。

後継者問題の解決策!?

もちろん、親族内承継だけが事業承継ではない。それ以外にも多様な選択肢がある。埼玉県・狭山市で不動産やホテル事業を展開する㈱第一住宅では、いわゆるヘッドハンティングによる後継者探しを進めてきた。中小企業では珍しい事例である。

34年前にこの会社を始めた河野経夫社長は、今年で66歳。年齢的にもそろそろ後継者を確定する必要があると考えた。「息子もいるが、息子はちょっと適正が違う」と河野社長は言う。また、同社は急速な成長を遂げてきたこともあって従業員も比較的若く、「社内の人材を次期経営者に育てあげるには相当な時間を要する」(河野社長)。そこで、河野社長の取った方法がヘッドハンティング。社長はヘッドハンティング会社が紹介する候補者たちと数年にわたって次々と面接を繰り返し、2年ほど前にやっとその人材を見出した。それが、現在同社で常務を務める平野朋之氏である。

「大事なことはわが社のカルチャーに合っているかどうか。この人はわが社のカルチャーにぴったりだと思いました」(河野社長)。また、平野氏も、同社が「お客様満足の追求を基本理念に掲げていて、それをトップ自ら実践しているところに共感しました」と語っている。

平野氏が後継者候補として入社してから、2年が経つ。現在、社長の右腕として働きながら、経営を学んでいる。「1つの事業部を管理・運営する経験はありましたが、会社全体を見回して判断していくことはまだまだ経験不足です。現在、そこのところを勉強中です」(平野氏)。

「経営者に能力がなくても3年くらいはどんな企業でももつ。しかし5年先となると、大変難しい。やはり優秀な人材を確保することが会社の維持・発展には不可欠なんです。でも、後継者を社内で選ぼうとすると選択肢が限られてしまいます。その点、ヘッドハンティングなら広く人材を求めることができます」と、河野社長はその意義を強調している。

このように社外から広く人材を登用するのもひとつの方法。あるいは、昨今増えてきているM&Aによる事業承継という方法もある。

コレが言いたい!
――後継者問題にビジョンを持て!――

いずれにしても、重要なのは後継者問題について、経営者がしっかりとしたビジョンをもち、計画的に事を進めていくことである。ところが、これが意外に実践されていない。図表5はその実態を示している。「承継のためにどのような取り組みをしたか」という問いに対し、「特別なことはしなかった」と答えている経営者が少なくないのである。

(図表5) 継承のための先代経営者の取組内容図5 継承のための先代経営者の取組内容

しかし、事業承継においては実際にさまざまな問題が発生する。たとえば、先代経営者の遺産相続の際に所有が分散してしまう株式を、後継者にどのようにして集中させるか。先代経営者と関わりの深い古参の役員や従業員から、後継者がリーダーとして信頼される状況をどのようにして作るか、など。これらさまざまな課題を前もって認識し、その解決策を盛り込んだ「事業承継計画」を策定して実行に移すことが肝要なのである。経済産業省も「事業承継ガイドライン」を作成し、「事業承継計画」の策定を経営者に促している。

もちろん、事業承継問題は今や経営者だけの問題ではない。政府は事業承継税制の拡充に真剣に取り組むべきであるし、経営者の債務保証の問題など金融機関が果たすべき課題も少なくない。さらに大学など教育機関でも「会社を引き継ぐ」ことの意義や課題などを若者たちに講義する「事業承継講座」などの開設に取り組むべきであろう。社会全体で、様々な角度から中小企業の事業承継を支援する。そのことで、日本経済の危機的事態の到来を未然に防ぐことが今求められている。

(2007/4/26 執筆)

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