山口義行・公式WEB

Yamaguchi-yoshiyuki.net

第6回 ビジネスチャンス!「新連携支援」

7月 17th, 2006

元記事

中小企業経営者の皆さん! 国の中小企業向けの支援策である”新連携支援”という制度を知っていますか?これを活用した新しいビジネスが次々と生まれています!

「新連携支援」の活用

2005年4月からスタートした「新連携支援」は、画期的な中小企業支援策である。この支援策を活用して、新しい事業を展開する中小企業も少なくない。私も関東経済産業局「新連携支援」の事業評価委員長として、この施策に深く関わっている。「コレが言いたい」の第6回は、この「新連携支援」を取り上げることにしよう。

「新連携支援」とは・・・

中小企業の場合、経営資源は乏しく、販路拡大の能力も限られている。イノベーションへの刺激も少ないといってよい。こうした限界を補いつつ、中小企業の「革新と創造」をどのように支援していくかは今日の中小企業支援策の最も重要なテーマである。そこで打ち出された施策が新連携支援政策である。それは、中小企業が連携して新製品の開発や新たなビジネスモデルを事業化しようとする場合に、最長5年にわたって国がそれを支援するというものである。

企業間の組織やそれらが集積する地域への支援ではなく、プロジェクトそのものへの支援であること。また、補助金を与えて終わりという従来の支援とは違って、申請書類の作成から事業化に至るまで、最長5年にわたって専門家たちがずっと付きそう形で支援していくこと。こうした点で、従来にない特徴を備えた支援策である。もちろん、補助金の仕組みも用意され、連携体を構築するための費用として500万円、実際に事業化を実現するためのものとしてさらに3000万円を上限に補助金が受けられる。

また、関東経済産業局では、専門家による中小企業支援グループの中に金融機関関係者を取り込んでいる。地域金融機関ほど地域の中小企業の実情に詳しい存在はないし、また事業化となった場合の資金手当てにも役割を果たしてもらえるからである。実際、認定案件の中には、金融機関の呼びかけで実現した「連携」など、金融機関が直接からんでいるものも少なくない。

図1:「新連携支援」とは・・・

新連携支援策によって生まれた新規ビジネス

私は関東経済産業局が実施する「新連携支援」において、プロジェクトの事業内容を評価するために設置された「事業評価委員会」の委員長を務めている。そのため申請案件にいち早く出会う機会をもつわけだが、そのたびに日本の中小企業の底力と企業連携支援の意義を実感させられている。一中小企業の「小さな発見」が他社との連携によって「大きな付加価値」をもつ事業に進化されていく様子、また、支援を担当するマネージャーの体験や人脈を活かした具体的な戦略提案によって、当初の事業計画が実現可能なものにブラッシュアップされていく様子は、傍で見ていても感動に値する。

また、本業以外の「わき道」的発明を企業間連携で大きな付加価値を生む事業へと発展させるというケースもある。たとえば「ワイピーシステム」はその本業であるメッキ事業のために開発した二酸化炭素洗浄装置の技術を応用して、本業とはまったく関係のない二酸化炭素消火器を企業間連携を活用して開発した。

同社社長の吉田英夫氏が二酸化炭素洗浄装置の売り込みのためにある販売先を訪れた際、洗浄ノズルの先から細かなドライアイスがガスのように噴出する様子を見て、販売相手が「これって、消火器にも使えるんじゃないの?」と口にしたことがきっかけとなった。もちろん、メッキ事業を本業とする同社にはその経験もノウハウもない。そこで、吉田社長は洗浄装置の開発の際に関わった企業を中心に連携体を構築し、さらに関東経済産業局の新連携支援を受けることを構想した。

消火器の要ともいえる二酸化炭素ボンベの供給は、「東栄化学」。消火器のバルブ開発は「三吉バルブ」の協力を取り付け、意匠デザインは「インターフェース」、部品組み立ては「日本ユニバーサル電気」の力を借りることにした。実験部門は消火器販売でトップを誇る「千代田防災」、アドバイザーとして元消防官も迎えた。

「国の補助金をもらっている事業なので連携各社が安心して参画できる」と、同社社長は語る。また、「ぶつかっていく問題が1つ1つ未知の領域であるが、そういうところでアドバイスをもらえるのがメリットである」とも語っている。担当した支援マネージャーは、グループ間の連携を上手く保つようにアドバイスしたという。

成功のポイントについて、この新連携支援策に中心的に携わってきた関東経済産業局の楠田正二部長(本年7月に退任)は、次のように語っている。

①市場からみたビジネスモデルになっているか、
②金融機関からの協力は得られるか、
③コア企業のリーダーシップによるチームワークは万全か-がポイントです。

新連携支援策では、すでに全国で168件が支援先として認定され、受け付けた相談は5000件にものぼるという(2006年6月現在)。

コレが言いたい
――中小企業支援で新たな「国づくり」

新連携支援策に関しては、何よりも以下の3点を強調しておきたい。

第1は言うまでもないことだが、経営者にはぜひこの新連携支援策に応募してほしいということである。多くの中小企業が挑戦し、新製品や新ビジネスが多く誕生してこそ、日本経済は本当の意味でデフレを脱却し、力強い成長軌道を再び歩み始めることになる。

第2は「継続こそ力だ!」ということである。この支援策が年々継続されていくことで支援を担当するマネージャーたちにさまざまな情報や知恵が蓄積され、より有効で強力な支援が可能になる。

第3は「中小企業支援を通して新たな連携が生まれる!」ということである。それぞれ取引金融機関を異にする中小企業同士が連携し、新たなプロジェクトを事業化しようとすれば、本来金融機関が相互に連携して、これを支援し育てることが必要になるはずである。現状では金融機関相互のコミュニケーションはきわめて希薄であるが、新連携支援への参加を契機に金融機関相互のかかわりが深まっていくことが期待できる。さらに同様のことは、行政組織間についても言えよう。たとえば医療器具など厚生労働省が関与する製品やビジネスに中小企業の連携体が取り組もうとした場合、これを支援するためには経済産業省と厚生労働省との連携も必要になる。

中小企業が連携し、その支援のために金融機関や行政が連携する。こうした関係の広がりは、中小企業支援を通して新たな日本経済の形が形成されていくということでもある。

(2006/07/17 執筆)

山口義行・公式WEB

Yamaguchi-yoshiyuki.net