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第3回 企業の未来は女性の雇用がカギ!?

6月 13th, 2006

元記事

景気回復に伴う人手不足、団塊の世代が大量退職する2007年問題などへの対応で、再び「人育て」が企業の課題になりつつある。なかでも、その取り組みが重要かつ難しいのが”女性”。しかし、その”女性”の活かし方が企業の未来を決定づける!

仕事と子育ての両立は難しい!?

出産を機に職場を離れる女性が多い。仕事と子育ての両立が難しいからである。またそうした女性が再び職に就こうとすると選択肢は著しく狭められ、キャリアを活かすことは大変難しい。これが現実である。

しかし、こうした環境がいつまでも改善されないことは、企業にとっても社会にとっても損失である。優秀な労働力を確保できないだけでなく、女性に「仕事か子育てか」という選択を迫ることで、結果として出生率の低下をもたらすからである。そこで、「コレが言いたい」の第3回では、女性の雇用について考えてみることにしよう。

法律はできたものの…

1985年に男女雇用機会均等法が制定され、今年で21年目を迎える。その間、職場における男女の格差は縮まったといわれているが、あまり実感がないという女性が多い。さらに、2005年には新たに「次世代育成支援対策推進法」が施行された。これは、自治体や企業が、育児休業制度の利用促進、企業内保育所の設置など、子育て支援のための「行動計画書」を策定し、厚生労働省に提出しなければならないというものである。ただし、対象となる企業は従業員301人以上に限定され、罰則規定もない。300人以下の企業については努力義務を課しているのみである。今のところ、明確な効果は確認できていない。

働く意欲を持つ女性たちの悩みは尽きない。財団法人『女性と仕事と未来館』の館長、渥美雅子さんは、「ライフバランスをとりながら、いかに仕事を続けるかが女性にとって一番深い悩み」であると指摘する。具体的には、夫の転勤に伴い仕事の継続を断念せざるを得ない、育児復帰後の待遇が悪い、保育体制に不安があるなど。「ファミリーサポートセンターが各地にあるなど子育て支援はあっても、PRが不十分で子育て中は仕事をあきらめる女性が多い」とも語っている。

依然、M字カーブくっきり

女性の年齢別労働力率(図表1)をみてみよう。日本は20代後半から30代にかけて労働力率が著しく低下し、そのためグラフがM字カーブを描いている。一方、諸外国は台形型でM字型ではない(かつては諸外国もM字カーブであった)。

(図表1)●女性の年齢階級別労働力率の国際比較
(図表1)●女性の年齢階級別労働力率の国際比較  内閣府 男女共同参画局HPより

もちろん、20代後半から30代女性の働く意欲が低いというわけではない。そのことは、図表2の就業希望率のグラフからも確認できる。

(図表2)●女性の年齢階級別潜在的労働力率
(図表2)●女性の年齢階級別潜在的労働力率  内閣府 男女共同参画局HPより

要するに、女性が子育てしながら働ける職場が少ないため、女性の希望とは無関係に職場を離れざるを得ない環境が依然続いているということである。

先進的な企業の取り組み

そんな中、画期的な取り組みで、女性の活用に成功している企業もある。

プレス金型の設計・製作・加工を行う㈱カミテ(秋田県)は、従業員41人中女性が23人、およそ半数を占めている。この企業では、働く女性を全面的にバックアップし、育児休業制度はもちろん、子供が病気の時に利用できる看護休暇制度なども積極的に取り入れている。また、事業所内に託児所が設置され、従業員は無料で子供を預けることができる。出産後も家庭と仕事を両立できる環境が整っているといえよう。

同社社長は言う。「育てた人材が育児などで辞めるのは会社の”損”。従業員にとって育児や介護が負担なのは会社にとっても困ること。仕事と育児が両立できれば、従業員はもっと能力を発揮できるはず」。

家庭を離れることができない「子育て真最中」の主婦にも、仕事を続けられる環境を提供しようとする企業もある。日本ノーベル㈱は、高い技術を持っていても家でしか仕事ができない主婦のために「在宅勤務制度」を取り入れている。在宅勤務の女性は週3回だけ会社に出勤し、残りは自宅で仕事をしている。「仕事と母親業、どちらも充実している」と従業員は胸を張る。

こうして女性を活用することで、企業側にも、大きなプラス効果があったと経営者たちは分析している。(株)カミテの場合、①社員の士気が高まり、欠損品が少なくなった。②出産後の復職率が100%であるため、企業の技術力を保つことができる--と指摘する。日本ノーベル(株)の場合は、①優秀な人材を確保できる。②働き方やスキルに応じて仕事を割り振りふることができる--などをあげている。

企業における女性比率と利益率

そこで、企業における女性比率と利益率との関係をみてみよう。図表3にあるように、女性比率が50%に近づくにしたがって企業の利益率も上昇しており、両者の間に明確な相関関係があることをみてとれる(女性比率が50%を上回ると利益率は若干低下する)。

(図表3)企業における女性比率と利益率との関係
(図表3)企業における女性比率と利益率との関係
男女共同参画研究会報告「女性の活躍と企業業績」(2003年6月経済産業省 男女共同参画研究会)より

女性の比率が高い企業が利益率も高いという相関は、たとえば人事考課が客観的でオープンであるとか、男女に関わらず人材育成の仕組みが整っているなど、女性が働きやすい職場特有の企業風土に起因していると思われる。そうした企業では管理職の中にも女性の比率が高くなる傾向がみられるが、この女性管理職比率と利益率との間にも明確な相関がみられる。図表4に明らかなように、女性の管理職比率が平均以下の企業と以上の企業とでは利益率に大きな差があり、平均以上の企業は以下の企業に比して2%以上も利益率が高い。

(図表4)女性管理職比率と利益率との関係
(図表4)女性管理職比率と利益率との関係
男女共同参画研究会報告「女性の活躍と企業業績」(2003年6月経済産業省 男女共同参画研究会)より

コレが言いたい--コストではなく投資とみなせ

女性が働きやすい環境を作るためには、会社はより多くの支出を覚悟しなければならない。女性の休業に備えて従業員数にゆとりがなければならないし、託児施設その他物的な投資も必要になる。しかし、これらを”コスト”としてではなく、”投資”とみなす感性が経営者には必要である。先にもみたように、この支出は優秀な女性の獲得や従業員の士気向上につながり、結局は企業の発展に寄与するからである。

なお付け加えていえば、この種の問題は企業努力ですべて解決できるというものではない。かつて、小泉首相は就任時、国会での所信表明で次のように述べた。「女性と男性がともに社会貢献し社会を活性化するために仕事と子育ての両立は不可欠の条件であり、これを積極的に支援するため明確な目標と実現時期を定め、保育所の待機児童ゼロ作戦を推進し、必要な地域全てにおける放課後児童受け入れ態勢を整備します」。

この公約はおよそ達成されていない。ところが、このことを強く批判するマスコミ論調はほとんどみられない。これは未だ問題の重要性が十分に認識されていないことに起因する。女性一人ひとりの悩みを社会全体で受け止める国民意識の醸成と、それを実現する社会的仕組みの構築が早急に求められている。

(2006/06/13 執筆)


(補)2006年6月12日の日本経済新聞は次のように報じている。

「日本経済新聞社が仕事と家庭の両立支援について主要401社に聞いたところ、『優秀な人材確保につながる』とする企業が87.7%に上った。支援策を導入した企業では新卒採用の応募が増えるなど波及効果も表れている。優れた人材の争奪が激しくなる中で、子育て支援は企業の競争力を左右する経営課題になってきた」。―――

同記事によれば、「次世代育成支援対策推進法」施行前の昨年2月に実施した調査に比して、支援策をコスト増と懸念する割合は15ポイント減り、55.3%になった。逆に優れた人材を集めやすくなることで「生産性が高まる」と回答した企業は84%に上った。また支援策の推進全般について経営に「プラス」「どちらかというとプラス」という回答も今回9割を超え、前回より13ポイント上昇した。以下、同記事中に挙げられている事例を列記すると…

日本興亜損保では男性社員向け「短期育児休業制度」(7日間まで有給)、出産や育児でやむを得ず退職した社員を再雇用する「Uターン制度」などを新設したことで、今春入社の新卒総合職の女性比率が04年度の3.5%から一気に約3割に上昇した。

アサヒビールや東京海上日動火災は、昨春から短時間勤務ができる期間を「小学校入学まで」から「小学校3年終了まで」に延長した。アメリカンファミリー生命保険も「生後から3歳になるまで」を近く「妊娠期から小学校卒業まで」に拡充する。

ソニーは育児休暇中の社員の職場復帰を支援しようと在宅勤務制度を昨春導入。松下電工も自宅や職場で徐々に仕事に慣れるプログラムを整えた。―――

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