山口義行・公式WEB

Yamaguchi-yoshiyuki.net

第51回山口教授のコレが言いたい!2011年

7月 2nd, 2014

サービサーを考える
~1通のメールから~

 先日、スモールサン会員からあるメールが届き、これがサービサーについてあらためて考えるきっかけになった。

横暴さが目に余るサービサー

そのメールとは下記のようなものである。

「昨日、私のクライアントに驚くべきことが起こりました。こんなことも現場では起こっているということを知っていただきたくてメールしました。

 この会社は都内でドラッグストアを経営する中小企業です。最盛期は十店舗ほど営業しておりましたが、近年の低価格戦争、薬事法改正などで経営環境が変化し、採算が厳しくなりました。一昨年ごろより、取引銀行の理解をもらいながら事業再生に取り組み、不採算店はクローズをしつつ、現在は3店舗でどうにかこうにか頑張っています。

 しかし、この度の震災以降の消費者マインドは東京でさえ消極的となり、前年比30%減という状況の中、そんな折も折り、昨日の夕刻に裁判所から執行官が来店し、レジの中の現金を差し押さえました。釣り銭まで持っていかれては営業に差し支えると店長が懇願し、どうにか、その分は残してもらったそうです。

 小売店にとって、1日の売り上げを丸ごと差し押さえることは死活問題です。また、営業時間中に店頭でレジのお金を差し押さえるということは、お客さまの目もあり風評の悪化を招きかねず、実に配慮の無い行為といえます。

 この差し押さえを行った債権者は、●●●●債権回収という消費者金融系のサービサーです。このサービサーは銀行からの債権譲渡当初から、ろくに交渉の機会も与えず、威圧的な取り立てをし、昨年末には稼働中の店舗の保証金を差し押さえるという強攻策を行ったため、危うく大家から解約寸前にまでなりました。もし解約ということになっていれば即倒産でした。(この一件は法務省にご報告しました)。さらに今回の店舗レジの現金です。

 私の経験では、悪質な税金の滞納者がこのような差し押さえをされた例は知っていますし、それは致し方なかったと思っています。しかし、今回の事例は、もともと銀行が貸し出した債権を、銀行の都合で不良債権処理としてサービサーに譲渡したものです。

 現在、中小企業に手厚い施策を行っている金融庁や中小企業庁の管轄を離れ、サービサーの主務官庁である法務省下では、このような『何でもあり』とも取れる無謀な回収を見過ごされていることが許されてよいものかと危惧(きぐ)しております」。

何のためのサービサーか

 読者諸氏は、このメールをお読みになってどのような感想をもたれるだろうか。

 1998年10月、「債権管理回収業に関する特別措置法」が公布され、1999年2月から同法が施行となった。サービサーとはこの法律に基づいて許認可された債権回収会社のことである。

 第一条には、同法制定の目的が次のように記されている。

「特定金銭債権の処理が喫緊の課題となっている状況にかんがみ、許可制度を実施することにより弁護士法の特例として債権回収会社が業として特定金銭債権の管理及び回収を行うことができるようにするとともに、債権回収会社について必要な規制を行うことによりその業務の適正な運営の確保を図り、もって国民経済の健全な発展に資することを目的とするものである」。(1条関係)

 一定のルールの下に、それまで弁護士しかできなかった「債権回収業」を民間業者に開放する。それを可能にしたのがこの法律だが、そのことで不良債権処理の加速化を促す。そこに同法の目的があるのだと記している。まさに、バブル後遺症の重荷にあえいでいた当時の日本の状況を映し出している。

 しかし、現在の日本の最重要の政策課題は、もはや不良債権処理の加速化ではない。そのことは、不良債権処理の加速化という課題とはまさに正反対の位置関係にある、「返済猶予法案」の延長措置に端的に表れている。

 今日の政策課題はいうまでもなくリーマンショック、そして大震災という二度の大きな打撃を受けて「沈没」しかねない日本経済を一刻も早く再生させ、あらたな成長軌道に乗せることにほかならない。とすれば、当然のことながら、サービサーが担う役割にも変化が生じてきてしかるべきである。

企業再生の担い手としてのサービサー~その新たな役割~

 その役割とは、一言でいえば「企業再生」。不良債権処理の加速化から企業再生の支援へと時代の課題が変化しつつある。とすれば、サービサーも「企業再生の担い手」としての新たな社会的役割を自覚し、それを実践していかなければならないはずである。そうでなければ、サービサーは「取り立て屋」として社会的非難の対象になるだけであり、その非難はサービサーを活用する金融機関にも及ばざるを得ない。

 上記のメールは、こう締めくくっている。

「債権回収が仕事の会社とはいえ、サービサーはもっと崇高な理念が徹底されるべきで、ただ利益追求に走るのではない、自己規律のようなものが求められるのではないでしょうか」。

 そこで私は、差し当たり2つのことを提案したい。

 第1は、サービサーの所管を法務省から金融庁ないしは経済産業省に移すことである。かつては不良債権処理の促進一辺倒だった金融庁は、今やリスケジューリングの推進役を担っている。時代の変化に対応して、自らが果たすべき役割も変わるべきことを認識しているからである。法務省にこうした柔軟な対応を求めることは難しい。サービサーがその法務省の管轄下にいる限り、自分自身の果たすべき社会的役割やその存在意義を十分に認識することも難しい。

 第2は、サービサーを震災復興に積極活用することである。スモールサンニュース本号の巻頭記事の中にもあるように、スモールサン・プロデューサーでM&A仲介を専門としている萩原直哉氏は、サービサーを活用することで、いわゆる二重ローン問題を解決できるのではないかと提言している。

「二重ローンの話が出ていましたが、負債の重荷を減らす方法の1つにサービサーの活用という手法があります。銀行が被災企業に対する債権を安く、例えば10分の1でサービサーに売って不良債権処理をしてもらい、被災地でない他地域の元気な企業が被災企業に出資して、そのお金でそのサービサーから安く債権を買い戻せば、被災企業は過去の借金の重荷をおろして企業再建に取り組むことができる。こんなやり方もありますから、私は被災地に出向いていろいろな企業の悩みをお伺いしてみようと思っています」。

 サービサーが企業再生のプロセスの一端を担うことで、震災からの復興に貢献する。こういう実例を数多く生み出すことで、サービサーは「企業再生」の担い手として、日本社会に新たな居場所を見いだすことなる。

 時代を味方にできる企業のみが成功を手にする――この当たり前の法則を、今こそサービサーも自覚してもらいたいものである。

(2011年6月7日執筆)

(2011年/スモールサンニュース6月号より)

山口義行・公式WEB

Yamaguchi-yoshiyuki.net