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第50回山口教授のコレが言いたい!2011年

7月 2nd, 2014

中小企業経営者には「支援を生かす」責務がある
~行政と中小企業の共同作業で、”活力ある日本経済”を復活させよう!~

東日本大地震によって、全国各地の中小企業は深刻な打撃を被った。そのダメージを少しでも和らげ、早急に活力ある日本経済を再生すべく、現在さまざまな緊急支援政策が中小企業向けに実施されようとしている。中小企業経営者は、今こそこの支援策を積極的に活用して、日本経済の再生に貢献する責務がある。


スモールサンによる「政策提言」

 震災後、私がスモールサン会員諸氏から寄せられた現状報告や政策要望を踏まえて、「政策提言」書を作成し、それを櫻井充財務副大臣や中山義活経済産業大臣政務官のところに届けたことについては、読者諸氏はすでによくご承知のはずである。

 前号のスモールサンニュースの巻頭対談でも述べたように、「政策提言」を作成するにあたって、私がもっとも強く主張した点は、「今回の震災については『間接被害』の概念を広くとらえて施策を講じなければ、十分な政策効果が得られない」ということであった。

 被災企業から一部の部品が供給されないために、生産がストップしている中小製造業者がいる。復興需要の影響で建設資材が手に入らないために、建物の引き渡しができず、資金繰りに窮している工事業者がいる。計画停電の影響で、売り上げが大きく落ち込んだ中小企業が続出した。風評被害で売り上げが急減している輸出業者がいる。自粛ムードでキャンセルが続き、売り上げが90%減という飲食店や旅行関係業者が少なくない。

 さらに、震災によって原材料が手に入らないために、親会社が休業状態にあり、その影響で待機を余儀なくされている下請け中小企業がいる。

 これら中小企業のすべてが震災の「間接被害者」であることは明白である。ところが、政府の規定によれば、これら中小企業はすべて、「間接被害者」ではないということになってしまう。

 なぜなら、政府が規定する「間接被害者」というのは、あくまでも被災企業との取引が全体の2割以上を占める企業だけだからである。これでは、せっかくの支援策の効果も大きく減殺されてしまう。どうしても改善を求めなければならない――これが、「政策提言」を行った際の、私の最大の問題意識であった。


成果が見えた「中小企業支援ガイドブック(バージョン3)」
~信用保証の対象を「その他、震災の影響により、業績が悪化している方」に拡大

 第一次補正予算成立(5月2日)後に作成された経済産業省の「中小企業向け支援策ガイドブック(バージョン3)」を見ると、この点についてたしかに改善がみられる。今回震災対応で拡充された「信用保証」の対象者の範囲に、従来の「直接被害者」や「間接被害者」に加えて、「その他、震災の影響により、業績が悪化している方」が新たに加えられているからである。

 補正予算を踏まえた新たな「ガイドブック」が作成されたことを、私に連絡してきてくれた中小企業庁の部長は、そのメールに「先般いただいたご意見も踏まえて、保証制度も、被災地域以外の事業者についても拡充した」とする一文を添えてくれた。スモールサンという中小企業ネットワークを背景に「政策提言」を行ったからこそ得られた「成果」である。

 そもそも支援政策は、政府から中小企業への一方的な「施し」ではない。それは、日本経済の維持発展のために、“現場”を担う中小企業経営者と行政担当者との「共同作業」で策定されるべきものである。学者や専門家は、この両者の間に立って知恵をしぼるのが仕事である。


スモールサンが設定する行政担当者との意見交換の場に、経営者は積極参加を!

 実際、現場からの指摘を受けて行政マンや私たち学者が問題を初めて認識するということが少なくない。例えば、先日、産廃業を営むある会員さんから、私のところに下記のようなメールが届いた。

「被災地域の復興に当たっては産廃業者の果たす役割は大きい。ところが、産廃業の認可はそれぞれ地元の自治体から得たものなので、他県の業者は被災地域で活動することができない。これを政府が特例措置などで対応すれば、多くの業者が復興活動に参加でき、早急な復興も可能になる。ぜひ、政府に進言してほしい」というものである。

 これは私にとっては、このメールで初めて知った問題である。早速、テレビなどで、「特例措置」の必要を訴えるとともに、5月15日の「日曜大学」でのパネルディスカッションで、中山政務官にもぶつけることにした。

 また、4月15日にスモールサンが開催した「中小企業庁担当者による説明会&意見交換会」でも同様のことが起きた。

あるスモールサン会員が、夏の節電をスムーズに行うためには、電気料金の仕組みを変える必要があると中小企業担当者に提言したのである。

 計画停電なしに夏場の電力不足を乗り切るためには、午前10時から午後2時の間のピーク時の需要を、早朝や深夜にシフトさせる「分散化」が必要になる。この点について、会員は下記のような発言をした。

「高圧電力は一日のうち、最大に使用した値(デマンド値)によって1年間の契約電力の基本料金が決まってしまう仕組みになっている。例えば、3月10日に最大値に達した場合、この日から換算して1年間の契約電力基本料金が決定してしまう。したがって、来年の3月10日を待たなければいくら節電をしても基本料金が下がらない。この仕組みを変えなければ、節電へのモチベーションも起きてこない。早急に改善をはかるべきである」

 この指摘で事実を始めて知った中小企業庁の部長は、その後早速資源エネルギー庁に問い合わせて、同庁からつぎのような「回答」を引き出してくれた。

「【回答】 御指摘のような過去一年間の最大需要電力により基本料金が決定される形態(デマンド制)については、自由化領域であり、規制の対象外でありますが、ご要望については、夏の需要対策の観点から料金において工夫を行えないか、東京電力に伝えてまいりたい」

 このやり取りが実際の「成果」につながるかどうかは未知数だが、もし改善につながれば、関東圏の企業に大きな影響を及ぼすことになる。仮にそうなれば、スモールサンが仲介した行政と中小企業経営者との「共同作業」が、また一つ実を結ぶことになる。これはまた、行政担当者との交流の場に多くの経営者が参加することが、いかに重要であるかを物語るものでもある。


支援政策を「現場に生かす」のは中小企業経営者の責務

 さらに重要なのは、いかにりっぱな支援政策が策定されたとしても、それを「現場で生かす」ことができなければ、「絵に描いた餅」にすぎないということである。ここでも、中小企業経営者の果たす役割は大きい。

 というのは、中央政府のところで決定された方針がすぐに全国に浸透するわけではないし、それがどの程度具体化されるかはむしろ現場の実践のなかで徐々に固まっていくものだからである。

 4月15日の「説明会&意見交換会」に参加したある会員から、後日こんな報告を受けた。

「15日の会に参加して、中小企業庁が金融機関だけでなく、リース業者に対しても、リスケへの積極対応を求めていることを知った。そこで、地元に帰ってから、早速取引関係にある政府系金融機関とリース業者を訪れ、リスケジューリングをもとめた。当初は対応が冷たかったが、それが中小企業庁の方針であることを、15日に配布された資料を見せ、同日中小企業庁の部長から頂いた名刺も見せて説明したところ、対応が一変し、リスケ交渉も大変有利に進んだ」というものである。

 中小企業支援政策は、このように中小企業経営者の言動を経て初めて「生かされる」のである。

 スモールサンでは、行政担当者と中小企業経営者との交流の場を設定していきたいと考えている。できれば、そうした「場」を日常的に定期的にもつことも考えていきたい。もちろん、会員諸氏がその場に積極的に参加していただけることが前提ではあるのだが。

(2011年5月9日執筆)

※中小企業庁の「中小企業支援ガイドブック(バージョン3)」は下記で見ることができる。中小企業経営者であれば一度は目を通しておきたいものである。

http://www.chusho.meti.go.jp/earthquake2011/

download/EqGuidebook-ver3.pdf

(2011年/スモールサンニュース5月号より)

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