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第44回山口教授のコレが言いたい!2010年

7月 1st, 2014

“中小企業の国際化”は国内の雇用を増やす!
~単純な「空洞化論」は誤り~ ~

 このコーナーで私は、「中小企業の国際化」の必要性を繰り返し訴えてきた。また、本年9月には「海外進出研究会」が設立されるなど、スモールサンの活動としても中小企業の海外進出を積極的に後押ししてきた。しかし他方では、「海外に企業が出て行けば、国内の雇用が減少する」として、いわゆる「空洞化」を懸念する声も少なくない。


“国際化”を進めた中小企業ほど、国内雇用を増やしてきた

 そもそも、「中小企業の国際化」には2つの意味がある。1つは中小企業が「輸出」への取り組みを進めること、もう1つは「直接投資」によって文字通り海外進出を果たすことである。「空洞化」が懸念されるのは後者の方であるが、中小企業庁の調査によれば、いずれの場合も国内雇用の増加に貢献するという結果が出ている。

 図1は、2000年度に新たに輸出への取り組みを開始した中小企業と、そうしなかった中小企業それぞれの国内従業員数の推移を示したものである。輸出を開始しなかった企業について言えば、2007年度の従業員指数(2000年度=100)は98.1。2000年度とくらべて2ポイント減少している。これに対し、輸出を開始した企業では110.4と、反対に10ポイント以上も増加していることがわかる。

図1 輸出開始企業と輸出非開始企業の国内の従業者数(中小企業)
~輸出開始企業の従業者数は、輸出非開始企業と比較して増加している~
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 興味深いのは図2である。これは、2000年度に直接投資を開始した中小企業とそれを行わなかった中小企業の間で、国内従業員数の推移を比較したものである。

 そこに示されているように、直接投資を開始しなかった中小企業では2007年度の従業員指数が97.2と、2000年度に比べて2.8ポイント減少しているのに対し、直接投資を開始した企業では反対に101.1と、1.1ポイント増加している。「輸出」のみならず、「直接投資」という形での「国際化」についても、国内雇用にプラスに作用したことを示している。

図2 直接投資開始企業と直接投資非開始企業の国内の従業者数(中小企業)
~直接投資開始企業の従業者数は、6~7年後には直接投資非開始企業を上回る~

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海外ネットワークの拡大が新たな国内雇用を生む

「中小企業の国際化」がなぜ国内雇用を増加させることになるのか、その理由について、中小企業白書は次のように書いている。

「国際化を開始する企業は、国際化開始後に国内の雇用を拡大させる傾向にある。この要因として、輸出開始企業では、輸出による市場拡大に対応するために必要な国内の従業者を増加させることが挙げられる。また、直接投資開始企業では、現地におけるネットワークを通じた取引先の開拓等による国内事業の拡大に必要な従業者を増加させることや、現地法人を管理するために必要な国内の従業者を増加させることなどが挙げられる」(2010年版『中小企業白書』164ページ)

「輸出」による売り上げの増加が国内雇用の増加に結びつくというのは、容易に推察しうる。注目すべきは、「直接投資」による「国際化」についても、海外進出によって国外のネットワークが広がることで、結果として国内部門の事業が拡大したり、その海外事業を管理するための要員が必要になることから、国内で仕事をする従業員を増やすことになるとしている点である。中小企業白書は、いわゆる「空洞化論」とは全く反対の論理を提示しているのである。

 以上に明らかなように、国内雇用の観点からいっても、「中小企業の国際化」は推進されてしかるべきものである。

 近年は中小企業の間でも新興国市場への進出希望は強くなってきている。他方、情報不足、経験不足、人脈不足などが原因で、いまだ多くの中小企業が立ちすくんでいることも事実である。私たちスモールサンはその「不足」を補うことで、今後とも「中小企業の国際化」を積極的に支援したいと考えている。このことが国内雇用を守り、さらには国内雇用を増やすことにもなると考えられるからである。

※注) 図1、図2とも、2010年版中小企業白書164ページより転載

(2010年11月7日執筆)

(2010年/スモールサンニュース11月号より)

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