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第37回山口教授のコレが言いたい!2010年

7月 1st, 2014

“支援競争”が始まった!!
~日本が「官民挙げて」の国際競争に後れを取る危険~

「官民挙げて」――この言葉が新聞の国際経済面に躍り始めた。リーマンショック後の未曾有の不況を契機に、各国で「官と民との関係」に変化が生じつつあることを示している。ところが日本では、「官から民へ」「民でやれることは民で」といった小泉政権時代のキャッチフレーズがいまだ頭から抜けない政治家やメディア関係者が多い。このままでは、日本が「官民挙げて」の国際競争時代に後れを取ることは必至である。


「官民で輸出促進」~「5年で2倍の輸出」を目指すアメリカ

「米 官民で輸出促進」――3月12日付日経新聞はこう見出しをつけて、オバマ大統領が打ち出した「輸出倍増」計画の推進案について報じている。その具体的内容は――
1.国務、財務、商務などの長官で構成される「関係閣僚会議」を新設する。
2.「大統領輸出評議会」を再開し、会長にはボーイングのマクナーニー、ゼロックスのバーンズ両CEOが就任する。
3.企業の商談支援を狙い、各国に派遣している大使に「通商外交」に取り組むよう指示。
4.官民一体の貿易使節団を年内に40以上構成し、海外に派遣する――というもの。

「民間主導色が強かった輸出振興で官民一体の態勢を整えて売り込みを展開」(同上日経新聞)しようというのである。アメリカと言えば、「経済は市場に任せるのがもっとも合理的だと信じる」市場原理主義者たちが政策を牛耳ってきた国である。小泉政権が「構造改革」と称して、そうした米国型市場原理主義を忠実に日本に持ち込もうとしたことは記憶に新しい。

 ところが、その米国が豹変しようとしている。今や「官民挙げて」「官民一体で」が経済政策の推進では合言葉になっている。こうした傾向はアメリカだけではない。


「官民挙げて」が功を奏した韓国

 昨年12月、UAEアブダビ首長国の国営原子力エネルギー会社が、アラブ諸国初となる原子力発電所の建設を韓国企業連合に発注することを決め、合意文書に調印した。

 韓国は、GE/日立を中心とする日米企業連合やフランス電力公社などのフランス連合を抑えて巨額プロジェクトを勝ち取ったことになる。李明博(イ・ミョンバク)大統領自らトップセールスを展開するなど、「官民挙げて」の対応が功を奏したのだと伝えられている。

 大統領府の尹政策室長が外交通商部、国防部、知識経済部、教育科学技術部、韓国電力などからなるプロジェクトチームを指揮し、経済、安全保障、教育などを網羅するパッケージプログラムを作ってUAEに提案した。それはまさに、国家の政策資源を総動員し、総合的パッケージを提起して勝ち取った受注なのである。

 ちなみに、李明博大統領はムハマド王子と6回電話で話し、外交経路を通じて親書も送った。そして、UAEで李大統領がハリーファ大統領と首脳会談を開いたその日、韓国の受注が決まったのである。

 受注には失敗したが、フランスもサルコジ大統領が中心になって、「UAEに駐在するフランス軍の増強」や「ルーブル美術館のUAEでの建設」など総合的な提案工作を展開した。

 このように、各国が受注に向けて「官民挙げて」の積極的な活動を展開していたことを知れば知るほど、日本の敗北が至極当然のことであったと思えてくる。


後れを取る日本~いまだ総合的支援策の必要が共通認識になっていない

 一言でいえば、国際市場では「支援競争」ともいえる状況が始まっているのである。日本も国家的レベルでの総合的支援策の策定とその実施が急がれる。現状を放置すれば、国際競争で後れを取ることは必至である。

 上記のように、アメリカ大統領は各国に派遣している大使に対して、企業の商談支援のために「通商外交」に取り組むよう指示したが、鳩山総理が外務省に対して、これに類似した指示を出したという報道はまったくない。

 日本では企業の海外ビジネス展開に対してはJETROが支援活動を行っているが、そのJETROがこのたび「仕分け」の対象となり、予算も縮小されかねない状況にある。ちなみに、韓国の同様の機関であるKOTRAは近年活発な活動を展開し、海外拠点も72カ国、99カ所に上っている。

 日本のJETROは現在71カ所、しかも予算上拠点増加は認められておらず、1拠点増やしたら1拠点減らすことを義務付けられている。――こんなことで大丈夫なのか。先行きに懸念を感じるのは私だけではないだろう。

 最大の問題は、支援政策がいまだ縦割り型行政の枠を越えられないことである。先日のスモールサン会員向け一斉メールで、鳩山首相が行政に横やりを入れるという意味で「内閣府に中小企業支援会議のようなものをつくりたい」と国会答弁したことをお知らせした。これを受けて、内閣府では現在「関連閣僚会議」設置の方向で準備が進められているが、そのペースはあまりに遅い。

 それもこれも、企業活動への総合的支援策の必要性が、いまだ国民の間で「共通認識」になっていないことに原因がある。私も、スモールサンを拠点にその「世論化」に、できる限り貢献したいと考えている。会員諸氏のご共感、ご協力を仰ぎたい。

(2010年4月9日筆)

(2010年/スモールサンニュース4月号より)

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