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第34回山口教授のコレが言いたい!2010年

7月 1st, 2014

競争と共生 ~2010年、その年頭に想うこと~

 世界不況の波が日本経済を飲み込んでからすでに1年が経過した。そんな2010年の年頭にあたって想うこと、それは「競争と共生」。今回は、この言い古された2つのキーワードについてあらためて考えてみることにしたい。


激化する“生存競争”

 生存競争――そんな刺激的な言葉が再び新聞の経済面に躍り始めた。たしかに、不況で大きく委縮したマーケットを舞台にして、現在多くの企業は激しい生存競争を繰り広げている。

 生き残るために値引き競争を仕掛ける企業があれば、「理不尽」と感じつつも、やむなくさらなる値引きで応戦しようとする企業がある。体力勝負で企業が真っ向からぶつかり合うこうした光景は、まさにこの言葉がふさわしいほどの「すさまじさ」を伴っている。

 とはいえ、不況期に企業間競争が激化すること自体は、なんら目新しいことではない。景気循環というものがこの世から消えてなくならない限り、それは今後も繰り返される光景でもあるだろう。

 しかし、ここで強調すべきは、今日の「生存競争」が、通常の不況期のそれとは比較にならないほどの“重み”と“広がり”をもっているという事実である。今回の大不況に「百年に一度」という形容句を付すことの正当性も、実はそこにある。


「過去の栄光」を捨てて、再スタートを切る覚悟を!

 リーマン・ショックを契機にしたバブル経済の崩壊は、アメリカの過剰消費にけん引される世界経済の成長モデルそのものの終焉を示唆している。とすれば、これまでこの成長モデルをどの国よりも享受してきた日本は、まさに“生き残りをかけて”、新たな成長モデルを模索していかなければならない。

 それだけではない。この大不況が加速させた技術革新のうねりが、戦後日本人が営々と築き上げてきた日本経済の国際的地位を根底から揺るがしかねない。「エネルギー革命」の進行が、20世紀の象徴であった「石油と自動車の時代」を一変させる可能性を孕んでいるからである。

 例えば、日本はガソリン自動車に関わる卓越した技術をもって、今日の国際的地位を築いてきた。しかし、生産の主軸が電気自動車へと大きく転換すれば、その技術的優位性も無に帰してしまう可能性がある。

 いや、それどころか、これまで日本の「強み」として機能してきた巨大な下請け機構の存在が逆に「足かせ」となって、日本の自動車メーカーが新興国企業の後塵(こうじん)を拝するといったことさえ起きかねない。それはまた、下請け中小企業群が“自立の道”を求めて、新たな戦いに打って出ることを余儀なくされるということでもある。

「過去の栄光」をかなぐり捨てて、あらためて過酷な「生存競争」に挑む!――この大不況は、まずもって、私たちにそうした“覚悟”を求めているのだと言ってよい。


単純な市場原理主義への回帰は許されない

 現在、こうした厳しい認識は徐々に経済界にも広がりつつある。懸念されるのは、そのことが、かつてわが国で「小泉・竹中路線」として称賛された「市場原理主義」への回帰を引き起こしはしないかということである。

 いわゆる「小泉・竹中時代」の日本は、「市場競争に身を任せ、弱肉強食を放置することこそが、日本経済の再生と強化につながるのだ」という、アメリカ型の単純な経済イデオロギーに包まれていた。政府は、自らそうした経済思想普及の先導役になるとともに、その体現こそが「構造改革」だと称して、無節操な規制緩和や「民営化」そして強引な不良債権処理を推進してきた。

「結果は?」と言えば、日本経済は新たな成長モデルを見いだすことも、新産業を創出することもできず、無念の思いを引きずりながら大量の中小企業が市場からリタイアしていくという悲惨な現実を生んだだけである。


「共生」への強い意識が競争力を生む

 

 再び、その轍(てつ)を踏むことは許されない。今必要なのは、厳しい「競争」を強いられている現実を十分に認識した上で、社会構成員の一人ひとりが「競争」ならぬ「共生」への強い意識をもつことであろう。

 私たちが挑まなければならない「生存競争」は、単に個別企業の生き残りをかけたそれではない。それは、いわば国を挙げて、新たな日本の生きる道を探り、新しい国の形を作る戦いである。

 そこで問われているものは、日本という国の持つ“総合力”をどう発揮するかということにほかならない。国家戦略としての新たな産業政策、成長政策そして中小企業政策が求められている理由もここにある。

 そのためには、個々の企業の経営者や従業員はもちろん、行政マンや研究者たちも含めた日本社会のすべての構成員が、「共に生きる」という自覚をもって、それぞれの立場で社会的課題の解決に積極的に貢献しようとする姿勢が必要になる。

 そういう強い「共生」意識こそが、新しい日本の競争力を生む。それは、「弱肉強食」の危機感を煽るだけでは決して得られない、日本社会が潜在的に持っている総合的なパワーの発揮である。

 翻ってみれば、「競争」と「共生」の新しい関係は、現在進行している技術革新のうねりの中にも潜んでいる。そこで繰り広げられる激烈な「開発競争」の背後には、「これ以上地球環境を悪化させることは許されない」という人類共通の危機感がある。地球人としての強い「共生」意識が、環境技術の開発に向けた高い競争力を生むことになる。

 さて、2010年の冒頭、漠然とこんなことを考えている自分は、果たしてこれからどんな社会貢献を実践していくべきなのか。少なくとも、スモールサン活動がそのうちの重要な1つであることは疑いない。会員諸氏には、本年も一層のご支援を願いたい!!

(2010年1月5日筆)

(2010年/スモールサンニュース1月号より)

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