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第33回山口教授のコレが言いたい!2009年

7月 1st, 2014

中小企業に必要な3つの支援策

中小企業に必要な3つの支援策

「底打ち」が言われながらも、依然として中小企業を取り巻く経営環境は厳しいままである。それどころか、個人消費の低迷などを背景に「不況感」を訴える業種・業態はますます広がりつつある。また、「百年に一度」と形容されるだけあって、今回の世界不況は市場や産業の構造にグローバルな変化を引き起こしつつあり、当然のことながら、日本の中小企業もそうした変化への対応が迫られている。こういう時代状況であれば、政府に対しても、たんなる「景気対策」にはとどまらない中長期的展望を踏まえた本格的な中小企業支援策が求められる。以下、この点について若干の私見を述べてみたい。


リスケ推進を国家的課題に

 求められる中小企業支援の第1は、いうまでもなく「資金繰り支援」政策である。大不況がもたらした急激な売り上げの減少は、何よりもまず中小企業の資金繰りを窮地に陥れるからである。

 周知のように、中小企業金融円滑化法(いわゆる返済猶予法案)が施行となり、銀行もリスケ対応の充実をあらためて課題として挙げている。しかし、同法の施行のみで問題解決が可能かと言えばけっしてそうでないことは、前号ニュースのこのコーナーでも書いたとおりである。

 2つの課題が未解決のまま残されている。その1つはリース業者やサービサーなど、金融庁管轄外の金融関係業者の協力をどのように得るかという問題、いま1つはリスケを実施した企業にどのようにしてニューマネーを供給するかという問題である。

 前者の問題を解決するためには、関係省庁の連携が不可欠になる。後者については、リスケ実施企業向けの新たな「信用保証枠」を設定するか、あるいは現行の信用保証協会とは異なる新たな信用保証の機構を設立するか、いずれにしても予算措置を伴う政策対応が必要になる。

「返済が難しいからこそリスケを実施したのだから、そんな企業に新たな資金を貸し出しても返済できないはずだ」――こんな論理で、リスケ実施企業へのニューマネーの供給や信用保証が拒まれてきた。しかし、ニューマネーを得られないのであれば、多くの企業はリスケを断念せざるを得なくなる。これでは、未曾有の不況に日本経済は柔軟に対応することができず、この不況を機に日本経済は成長力を大きく失うことになる。

 むしろ、「適切にリスケを実施すれば、新たな貸し出しも可能になるはずだ」という考え方に立って、行政も金融機関も積極的にニューマネーの供給を検討すべきであろう。リスケの推進は「かわいそうな中小企業を救う」という社会政策ではなく、企業や金融機関が大不況への柔軟な対応を積極的に行うことで日本経済の活力を維持するという、まさに国家的規模で展開されるべき経済政策なのである。


中小企業に「国際化」支援を~とくに北東アジア経済圏構想を念頭に置きながら~

 求められる中小企業支援の第2は、「国際化支援」政策である。中国経済を扱った前号ニュースの巻頭対談に対しても、スモールサン会員から「中国企業とのビジネスに進出したいが、情報も乏しく何から始めたらいいかもよく分からない」という声が「感想」として寄せられた。そのことは、皆さんに一斉メールでお知らせしたとおりである。

 この大不況はアメリカのバブル崩壊を起点としており、それは「アメリカの過剰消費(対外赤字)にリードされながら、世界各国が成長を果たす」という近年の世界経済の成長パターンに基本的な変容をもたらした。そんな中、新たな成長のリード役として脚光を浴びているのが、中国などの新興国である。日本の中小企業もこうした市場構造の変化に対応する必要がある。

 しかし、これら諸国への進出やこれら諸国の企業との取引を望みながら、情報不足、経験不足、人脈不足などで立ちすくんでいる中小企業が少なくないことも事実である。とすれば、その「不足」を補うことが政策支援となる。私がいう「国際化支援」とはこのことである。

 たとえば、日本、韓国、中国、ロシアという「北東アジア圏」の経済交流が進めば、九州地方のほか、北陸、東北、北海道など、現在元気がないと言われている地域の活性化にもつながる。しかし、中国やロシアなどとのビジネスにはいまだリスクも多く、とりわけ中小企業が単体で切り込んでいくのは危険でもある。

 各国政府や地方自治体が協調してリード役を果たしてビジネスマッチングの機会を提供していくなど、政治的な支援が必要である。こうした国際的な協調に基づく支援政策によって、日本の技術、中国のマーケット、ロシアの資源をうまくつなげることができれば、「北東アジア圏」は世界経済の成長にも大きな貢献を果たすことになる。


新分野開拓に省庁連携で支援を ~内需再構築を目指して~

 

 求められる中小企業支援の第3は、内需を再構築するという観点から中小企業の「新分野開拓を支援する」政策である。

 日本の輸出依存度は他の先進国と比べてとくに高いというわけではない。しかし、2000年以降、日本経済は輸出への依存を急速に高めつつ成長を遂げてきた。2000年には11%程度であった財貨・サービス輸出のGDPに占める割合(実質ベース)は、08年には16%程度にまで上昇している。この輸出依存の高まり、言い換えれば内需の伸び悩みが、アメリカ発世界不況の波を日本経済がもろに受けることになった理由でもある。

 そこで、日本経済をより強靭なものにしていくためには、内需の再構築が不可欠になる。内需再構築とは、国民のニーズや時代の要請を背景に、需要と供給とを新たにマッチングさせることである。その場合、さしあたり注目されるテーマは、「環境」や「福祉」であろう。

 いわゆる「低炭素社会への転換」は日本経済が担う時代的課題である。日本の産業構造がこうした時代の要請に見合ったものへと転換していく過程でこそ新たな内需が形成され、それに対応した供給体制が生み出されていく。内需の再構築とはそういうものである。

 また、内需の再構築は「福祉国家」の再構築と連動していなければならない。高齢化社会の進展と小泉政権以来の社会保障費抑制策によって、今や日本の医療・福祉は瀕死の状態にある。医師や看護師の不足、相次ぐ医療施設の閉鎖、低賃金と加重労働で退職者が跡を絶たない福祉の現場。こうした現状を脱し、国民の強いニーズに対応できる医療・福祉産業を構築することなしに、内需の再構築もありえない。

 こうした分野に果敢に挑もうとする中小企業をどのように支援するか。ここでも、環境省、厚生労働省、経済産業省などの連携が必要になる。


新たな中小企業支援体制を

 上記3つの支援策を実施するためには、省庁間連携が欠かせないことは上述したとおりである。もはや、中小企業支援は、各省庁の官僚任せの縦割り体制では十分な実施が不可能な政策分野なのである。今こそ、首相主導、官邸主導、政治主導の意味が試されることになる。

(2009年/スモールサンニュース12月号より)

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