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第29回山口教授のコレが言いたい!2009年

7月 1st, 2014

新政権に求む、中小企業担当大臣の設置!
――中小企業の目線から“選挙”を考える――

 いよいよ国民が待望していた(?)衆議院の解散が実施され、総選挙の日程が「8月18日公示、同30日投開票」と決まった。本ニュースが配信されるころは、まさに選挙戦真っただ中ということになる。ところで、近年選挙の度に、私が政治家や中小企業団体などに訴えてきたことがある。それは「日本においても中小企業担当大臣を設置すべきではないか」ということである。


中小企業担当大臣設置を提言!

 2002年12月頃だっただろうか。民主党代表に就任したばかりの菅直人氏に呼ばれ、中小企業の現状や中小企業政策について1時間ほどレクチャーしたことがある。

 私は、不良債権処理の推進を掲げ、結果的に中小企業向け融資の貸し渋りを横行させてしまっている当時の小泉政権の施策に対し、民主党が十分な批判を展開できていないこと、また対抗軸となる政策も打ち出せていないことなどを指摘した。

 その際、もう1つ、菅氏に重要な施策を提案したことを覚えている。それは、「中小企業担当大臣を設置したらどうか」というものである。菅氏は私の提案に強い興味を示し、以後民主党の『政策インデックス』の中に――残念ながらマニュフェストには記載されなかったが――「中小企業担当大臣の任命を検討する」という一文が明記されるようになった(2009版では「中小企業施策全般を一元的に担当する大臣を任命します」として、「任命を検討する」が「任命する」となっている)。


中小企業の目線で法案をチェックする大臣が必要

 私は今も中小企業担当大臣の設置が必要だと考えている。主な理由は2つある。その1つは、中小企業の政治的地位の低さがさまざまな問題を引き起こしていること。

 例えば、小泉政権下、金融庁が中小企業の実情を無視した画一的な金融検査マニュアルで金融機関を指導したために、中小企業が不当に「貸し渋り」を受けた。その後、金融庁も反省し、より現実的な「マニュアル」を作成するに至るのだが、政策ミスによって倒産してしまった中小企業はもはや戻ってこない。そんな時、金融庁の施策を中小企業の目線でチェックし、閣議でその是正を求める中小企業担当大臣がいたら、事態は大きく変わっていたかもしれない。

 同様の問題は繰り返し起きている。2006年1月に閣議決定され、同年3月に衆議院を通過した中小企業増税策も同様である。これは、同属企業の社長が所得税を支払う際に認められる「給与所得控除」に法人税を課すというもの。税理論上も矛盾に満ちた施策だが、増税対象企業が「会社全体の2%程度、5~6万社でしかない」という財務省の説明を真に受けて、閣議でもほとんど議論されないまま法案提出が決定された。

 税理士会の調査では、実際には30%、70万社ほどが増税対象になることが当時すでに予想されていた。結局、法施行1年後には、対象となる中小企業の所得水準を引き上げるなどして増税対象企業を減らす調整がなされたが、これもやはり中小企業の目線で法案をチェックする中小企業担当大臣の必要を示す事例である。

 このように、担当大臣を持たないという中小企業の政治的地位の低さが、中小企業の現場に様々な負担や混乱をもたらしている。私はこうした現状を是正したいのである。ちなみに、フランスでは中小企業担当大臣が閣僚の一員であり、アメリカでは中小企業庁長官が閣議に参加できる仕組みになっている。


縦割り行政に横ぐしを入れるために

 

 いま1つの理由は、今日では「中小企業というテーマ」はもはや縦割り行政では対応しきれないということ。例えば、環境政策にしろ、地域活性化策にしろ、政策推進にあたって中小企業の問題は避けて通れない。また、医療や福祉さらには農業の分野でも、中小企業の活用は重要な課題になっている。中小企業の側からみても、環境分野や医療・福祉分野への進出は、今や真剣に追及されるべき経営課題である。

 このように中小企業のもつ重要性が高まり、その活動分野が多岐にわたる現在においては、従来の縦割り行政だけでは中小企業政策は十分に展開できない。その縦割り行政に「中小企業」という観点から横ぐしを入れる行政改革が必要なのである。

 現在中小企業政策を担う中小企業庁は、経済産業省の「外局」という位置づけにある。これを金融庁のように内閣府の「外局」に位置づけ、金融庁が金融担当大臣を持っているように中小企業担当大臣を置いて、中小企業庁が他の省庁と対等の関係に立って中小企業政策を推進していく体制が求められているのである。


各党の対応

 以下は、2007年参議院選挙の際に東京中小企業家同友会が行った公開質問状に対し各党東京都本部が示した回答である。「中小企業省を設置し、中小企業担当大臣を置くことについて、貴党のお考えをお聞かせ下さい」という問いに対するもの。参考までに掲載しておく。(なお、下記はあくまでも07年参議院選挙の際のものであり、今回の衆議院選挙における「質問と回答」ではないので注意されたい。なお、順序は当時の回答順)。

【社民党】
 現在の中小企業庁は、中小企業庁設置法により、国家行政組織法に基づいて経済産業省の外局として置かれています。しかし、政府による大企業中心の政策や余りにも少ない国の予算(07年度予算は1625億円で歳出全体の500分の1)、低い開業率や廃業の多さなど脆弱な経営基盤を見れば、中小企業政策の一層の強化が必要です。諸外国では、フランス(中小企業・小売業・職人・自由業大臣)や米国(中小企業庁官)、ベルギー(中小企業・農業大臣)、インド(小規模産業大臣)、アフリカ諸国で中小企業大臣などが置かれています。 日本でも中小企業の地位を高め、多岐にわたる中小企業政策を充実・強化し、環境や労働、社会福祉、農業等との政策的連携の強化を促進させるために担当大臣の設置を検討します。

【民主党】
 現在、中小企業関連の予算は、主に経済産業省、財務省、そして厚生労働省の三つの省庁の所管にまたがっており、予算請求も別々に行われる仕組みになっています。こうした縦割り行政が、わが国における中小企業行政の遅れ(例えば、下請けいじめがいつまでもなくならないことや、欧米諸国と比較して、中小企業が経済全体における従業員比率にふさわしい販売額シェアを占めていないことなど)の原因となっていると思われます。これらのことからも、中小企業行政をより横断的に統括するため、中小企業担当大臣の任命を検討します。(中小企業担当副大臣を置いているフランス等の例があります)。

【自民党】
 中小企業の位置づけは重要ですが、自由民主党は、小さな政府を志向しており、現在の中小企業庁をより効率よい機構に変革しつつ、皆様の期待にこたえ十分な政策効果を収めるよう努力してまいります。

【共産党】
 中小企業を重視することを行政組織の面から担保することは重要であり、中小企業庁を省に格上げして担当大臣を置くことに賛成です。日本の中小企業は、生産、流通、サービスの各分野で大きな比重を占め、雇用でも全従業員の八割にのぼるなど、日本の経済、社会を土台で支える存在です。また、先端産業といわれる分野をふくめ、「モノづくり」の重要な部分を担っています。さらに、大手資本が「もうけ優先」から生産拠点を海外に移したり、大規模小売店が出退店を繰り返して地域経済に悪影響を及ぼしたりしているなかで、中小企業は、伝統・地場産業、中小商店・商店街など地域経済の循環と地域社会を支える役割をも果たしています。日本経済の中で「主役」と呼ぶにふさわしい位置を占めている中小企業を支えるために、行政組織の面で中小企業を位置づけるとともに、経済政策を根本的に転換し、中小企業経営者や自営商工業者を支援することが必要だと考えます。

【公明党】
 かつてアメリカのクリントン大統領が「中小企業省」という構想を表明したことがあります。その背景には、アメリカが産業の空洞化を招いた後の1970年代から、中小企業が非常に増加し、大企業の国・アメリカとは反対の状況が生まれつつあり、それが空洞化を埋める原動力になっていることを表象して、その呼び名を使用したものと言われております。公明党も貴会より中小企業省の設置や大臣の任命についていただいているご提案を重く受け止めており、当初から中小企業が多いわが国が中小企業省を持つことは、何ら無理なことではありません。実現に向けて前向きの検討課題としていきたいと思います。

(2009年/スモールサンニュース8月号より)

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