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第24回山口教授のコレが言いたい!2009年

7月 1st, 2014

中小企業は「リスケ」で不況から会社を守れ!
――金融庁と保証協会は足並みをそろえよ!――

現在、大手自動車メーカーや電機メーカーの下請け企業のなかには、売り上げが前年比5割減といった事態に直面しているところが少なくない。そうなると、既存債務の返済計画を見直すリスケジューリング、いわゆる「リスケ」が必要になる。金融機関もある程度そうした要請に応えていかないと、力のある中小企業を次々と倒産させてしまうことになりかねない。


中小企業経営者が知らなければならない金融行政の仕組み

 去る2月3日、国会記者会館で政策工房J-Wayの勉強会が実施され、スモール・サン会員を含め、100名近い参加者が集まった。金融庁からは監督局総務課長の乙部辰良氏、中小企業庁からは事業環境部長の横尾英博氏が報告者として出席してくれた。

 そこで、確認されたことの1つは、「金融庁がかなり変わった」ということである。とくに重要なのは、「リスケ」に関する指導方針の変化である。

 かつては、金融機関が中小企業の求めに応じてリスケに応じると、その企業に対する融資は金融庁から「不良債権」とみなされ、多額の貸倒引当金を積まなければならなかった。それが重しとなって、リスケ要請に応じるのが難しいという状況が続いていた。

06_2 表1に示されているように、銀行(以下、信用金庫なども同じ)は融資先企業を少なくとも5段階に格付けするように金融庁から義務づけられている。黒字が続いていて問題がない企業であれば、「正常先」。2期連続赤字に陥れば、「要注意先」。そして、その「要注意先」のうち、リスケなど貸し出し条件の緩和を行った企業については、「要管理先」と位置づけられる。さらに、債務超過となると「破たん懸念先」。いよいよ整理に入らなければならない段階にまで至ると、「破たん先・実質破たん先」ということになる。

 重要なのは、表1の右側にある数字(%)である。これは、その格付けに応じて、金融機関が積まなければならない貸倒引当金の比率を示している。

 例えば、Aという企業に、銀行が1億円貸してあったとしよう。その企業が「正常先」にいてくれれば、銀行に負担はほとんど生じない。しかし、それが「要注意先」に格下げになると、銀行は300~400万円もの引当金を積まなければならなくなる。もちろん、その分だけ銀行にとっては利益が減少することになる。さらに、リスケが実施されて、A社が「要管理先」に格下げになれば、今度は1500~3000万円の引当金を積むことになる。300万円の引当金で済んでいたものが、3000万円の引当金を積まなければならなくなった場合、銀行はリスケに応じただけで2700万円もの利益縮小をかぶることになる。
 となれば、銀行も簡単にはリスケに応じられない。中小企業経営者はただただ「銀行は冷たい!」などと叫んでいるのではなく、背後にこういう仕組みがあることをまず学ばなければならないのである。


「3年以内」から「5年以内」へ

06_1 この仕組みの下では、リスケは難しい。これでは、景気悪化の度に大量の中小企業が倒産することになる。そういう問題意識から、私はかねてより、こうした硬直的な金融行政のあり方に対し、この仕組み自体を変更させるか、あるいはその運用を緩和させるべく、意識の高い国会議員や中小企業経営者とともに運動してきた。

 そのかいあって、金融庁も徐々に柔軟化し、数年前から金融庁は、仮にリスケを実施しても、その企業が「向こう3年以内」に黒字化し、「正常先」に戻れそうな見通しがあれば、「要管理先」に引き下げなくてよいとする方針を打ち出した。

 しかし、麻生総理でさえも、むこう3年は続くと国会で表明する大不況である。3年以内に黒字化」は、中小企業にとって簡単なことではない。そこで、昨年末金融庁は、これを「5年以内」に変更した。おかげで、銀行は髄分リスケがやりやすくなった。私は、今回の措置を素直に評価したい。しかし、「そんなこと知らなかった」という中小企業経営者が多くては、これも意味をなさない。経営者は会社を「守り」たければ、「学ぶ」ことを怠ってはいけないのである。


問われる保証協会の姿勢

 しかし、これで問題解決とはいかない。実際にはリスケは依然として難しいというのが、現場の声である。というのは、リスケを実施した企業に銀行が追加の貸し出しをする場合、信用保証協会の保証を得ることが極めて難しいからである。
そうなると、銀行はリスケ先企業への新規貸し出しを躊躇せざるをなくなる。「保証」が得られず、新規の貸し出しを受けられないとなれば、中小企業もリスケをあきらめざるをえなくなる。これでは、中小企業の倒産が多発する事態も止められない。

 信用保証協会を所管するのは、中小企業庁である。金融庁がリスケをやりやすくする政策を打ち出したのであれば、中小企業庁もこれに呼応しなければ、政策意図は貫徹しない。今こそ、省庁間の連携が望まれるのである。

 先日の政策工房J-Way勉強会でも、私はこのことを中小企業庁の横尾氏に訴えた。これに対し、横尾氏は、「リスケを行ったというだけで保証をしないというのは、中小企業庁の方針とは異なる。そういう形式的な判断をせず、柔軟な対応をすべきだというのが、私たちの方針だ」と返答した。

 しかし、横尾氏のいう方針が各地の保証協会に徹底されているとはとても思えない。各地の保証協会ごとで運用方針にかなりの違いがあることも、経営者を含めた同日のディスカッションで明らかになった。経営者は銀行を選ぶことはできても、保証協会を選ぶことはできない。これは、明らかに理不尽である。それが理不尽であるということを、「世論」にしていくことが必要なのである。

 中小企業経営者は、会社を「守る」ために、「学ぶ」だけでなく、「声を上げる」こともしなければならない。スモール・サンが、そういう正当な「声」が生まれる拠点となるように、私は、単なる「情報の消費者」ではない意識の高いスモール・サン会員を一人でも多く増やしていきたいと考えている。

(2009/スモールサンニュース2月号より)

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